2008-10-20

【’08知事選】介護の人材不足深刻

:::引用:::

 2日午前8時、新潟市西区の特別養護老人ホーム「穂波の里」。介護福祉士の滝沢かおるさん(32)は「温かいうちに食べてみませんか」と、入所者の女性に声をかけた。朝食のトレーを前に、女性は頭を垂れて眠り始めていた。30秒後、別のテーブルへ向かった。

 滝沢さんはほかの2人の職員と入所者約20人の食事をみている。食事前の身支度や食事後の口腔(こうくう)ケアも含めると、1回の食事を 済ますのに3時間はかかる。「お茶でも飲みながら、話し相手になりたい。でも、この人数では無理。職員みんながジレンマを抱えている」と滝沢さんは話す。

 特に夜間の人手不足は深刻だ。午後5時から翌朝9時半まで、計80人の入所者を4人でみる。入所者のおむつを替え、床ずれを防ぐために何度も体の向きをかえて回る。滝沢さんは「やりがいはあるが、オーバーワーク気味。この状況に拍車がかかれば、続けられないかも」。

 穂波の里ではここ数年、新卒の応募者が減っている。同施設を運営する社会福祉法人坂井輪会の上杉あさ子事務局長は「職員を補充できなければ、今いる職員の夜勤の回数や業務量が増える」と嘆く。

 財団法人介護労働安定センターの06年度の調べでは、県内の介護事業者の59・4%が「従業員不足」を訴えた。また、同センターによる と、介護職員と訪問介護員の県内の離職率も、16・3%(1年間の離職者総数を、調査開始時の在籍者で割って算出)で、他業種の平均14%より高い。

 別の施設で働いている男性(29)は現在、給与の低さを理由に転職を検討している。1年目の月収は手取りで約13万円。その後の昇給も年4千円ほどで、結婚を機に辞める同僚も少なくないという。

 県内の介護福祉士養成校11校の07年度入試では、合計690人の定員に対し、応募者は定員より少ない651人。実際に入学したのは 508人だった。ある養成校は「コムスンの報道などを通じて『きつくて給料が安い』というイメージが広まった。本人が希望しても、進路指導の教諭や家族に 止められる例もある」と嘆く。

 人材不足が続けば、1万6千人超が入所を待っているにもかかわらず、特別養護老人ホームの新設は難しくなる。今後、団塊の世代が高齢化すれば、介護が必要となる人たちは激増する。

 県老人福祉施設協議会の近藤和義会長は「職員の『社会貢献したい』という気持ちをもっと保障してあげられる施策が必要だ。働きがいのある仕事だということを学生らにもっと知ってもらう必要もある」と訴えている。(長富由希子)

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●山崎栄三候補のマニフェストから
 福祉・教育、予算の主役に

 県の民生費は06年度決算で全国47位と、福祉が後回し。医療・福祉、教育を「予算の主役」にする。介護・福祉職場の深刻な人材不足などを改善するため、国に介護報酬の改善などを求める。特養ホームを増設し、在宅支援の拠点づくりも進める。

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●泉田裕彦候補のマニフェストから
「産業は福祉の糧」になる

特別養護老人ホームなどの施設入所に加えて、地域ぐるみで高齢者介護に取り組む仕組みをつくる。北欧諸国は高福祉、高負担でも力強い経済成長を続けている。これは多くの税金を納めてくれる企業が育っているためで、「産業は福祉の糧」になる。


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