国境を越えた人材の移動が増える中で、欧米諸国の大学は、優秀な留学生の獲得競争にしのぎを削っている。
とりわけ、米国の大学は、中国などアジア諸国の優秀な学生に最も人気のある留学先になっている。日本の大学が後れを取り戻すためには、留学生政策の抜本的な見直しが必要だろう。
政府は、大学などで学ぶ留学生を、現在の12万人から2020年をめどに30万人にまで増やすことをめざす「留学生30万人計画」の骨子を策定した。
政府が留学生受け入れ政策を打ち出すのは、1983年に「留学生受け入れ10万人計画」を掲げて以来、25年ぶりのことだ。
大学や大学院の国際化が進み、研究が活性化すれば、科学技術の振興や産業の国際競争力向上にも役立つ。
日本と諸外国との懸け橋となる優秀な人材を育てることは、国際社会で日本が発言力を増す上でも重要なことだ。
欧米諸国の受け入れ状況は、米国が58万人、非英語圏の仏独でも25万人前後で、日本の12万人を大きく上回っている。
受け入れ人数は、大学の魅力を示すバロメーターだろう。
留学生30万人計画には、国際化の拠点として30の大学を選定し、原則英語のみで学位が取得できるコースを設けたり、外国人教員の採用を増やしたりして教育水準を高めることなどを盛り込んだ。
英紙ザ・タイムズが昨年公表した世界大学ランキングでは、東大が17位、京大が25位だった。教員や学生のうち、外国人が占める比率も評価の指標に入っている。改善が進めば、日本の大学の評価も全体に向上するはずだ。
外国人を採用する日本企業が少ないため、卒業後の就職が難しいことも“障壁”の一つだ。
政府は昨年から、アジア人財資金構想に基づく教育プログラムをスタートさせた。
大学と協力企業で「ビジネス日本語」や「企業実習」など企業側のニーズに合った専門教育プログラムを用意し、これを受講した留学生は、企業が原則採用するという仕組みだ。
こうした産学連携を一層強化していくことも必要だろう。
海外での日本語教育の推進や、日本留学希望者のための海外の窓口一元化なども、30万人計画の重要な柱だ。
こうしたプランの早急な具体化に向けて、さらに議論を深めていかなければならない。
0 件のコメント:
コメントを投稿