介護の現場で、人材不足が深刻になっている。この現状を打開する手掛かりを地方の現場から探ろうと、福岡県介護福祉士会(約3200人)は15日、「制 度政策検討委員会」(委員長・信友浩一九州大学大学院教授)を発足させる。8月上旬には意見をまとめ、厚生労働省などに提出するほか、市民にも現状を広く 知ってもらう行動を検討するという。 (酒匂純子)
同会の因(いん)利恵会長(61)は現場に広がる危機感を強調する。「現場からは悲鳴が上がっている。何とかしなければ、このままでは介護職はいなくなってしまう」
介護保険制度が導入されたのは2000年。介護労働者は増えたものの低賃金や過重労働により離職者が増え、それにより残った労働者にさらに負担がかか る、という悪循環に陥っている。介護労働安定センター(東京)の2006年度介護労働実態調査によると、ホームヘルパーについて不足していると答えた事業 者は63.1%、施設などで働く介護職員については45.2%に上った。
因さんが懸念しているのは、燃え尽きて現場を離れる若者たちが後を絶たないことだ。ある男性の介護福祉士はタクシー運転手に転職した。結婚して子どもが 生まれたが、「育てられる給料じゃない」からだ。今春から施設で働いている大卒の介護福祉士は、月給が手取りで約13万円。同僚と2人暮らしで、風呂に湯 をためないなど節約生活をしている。
介護労働者の賃金は介護保険制度下の介護報酬に制約されており、昇給には限界がある。委員会は介護施設関係者や現場で働く介護福祉士、県職員など9人で構成。来年度が3年に一度の介護報酬改定に当たることから、現状を改善する改定になるよう、働き掛ける。
因会長は「私たちはお年寄りの命と生活を預かっている専門職、と自負している。せめて一般職並みの給与で、介護の仕事に生き生きとかかわりたい」と語っている。
●離職率2割超す 低賃金…潜在化する労働力
介護労働の現場では、高い離職率が問題視されている。全産業で16.2%の離職率は、介護分野では20.3%(施設などの介護職員24.0%、ホームヘルパー15.0%)に上る。
要因の1つに低賃金がある。厚労省の2006年賃金構造基本統計調査によると、男性一般労働者の月給(支給額)は全産業で37万2700円なのに対し、 福祉施設介護員が22万7100円、ホームヘルパーは23万600円。勤続年数も全産業13.5年に対し、各4.9年、3.9年と短い。女性はこの差が縮 まるが、傾向は同じだ。介護福祉士のうち4割にあたる約20万人が介護分野で働いていないという「潜在介護福祉士」の問題もある。
国は04年に約100万人だった介護労働者が、14年には140万-160万人必要と見込んでいる。現在、年間10万人ほど増加しており「将来の需要増に必要な介護職員の確保は可能だが、定着化のための取り組みが重要」としている。
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