企 業に雇用されるビジネスパーソンが、定年まで得ると予想される賃金、つまり生涯賃金と学歴の関係については、以前から詳しい調査がある。例えば、労働政策 研究・研修機構の統計によれば、新規学卒者として就職し、ずっと同じ企業に勤務する場合を仮定すると、「学歴別では、男性は中卒2億2000万円、高校卒 2億6000万円、高専・短大卒2億6000万円、大学・大学院卒が2億9000万円、女性では高校卒1億9000万円、高専・短大卒2億2000万円、 大学・大学院卒2億6000万円」となっている(※同機構編『ユースフル労働統計 2008』より)。
この統計について、同書では「学歴が高くなるにつれ生涯賃金も高まっている。学歴が高まるにつれて就業年数は短くなるが、その一方で賃金水準も高いた め、結果として高学歴ほど生涯賃金が高くなっている」と述べられている。高校卒・高専・短大卒と、大学・大学院卒を比べると、男性で約3000万円の開き がある(退職金を除く)。たしかに差はあるのだが、想像した以上に大きくないと思われるのだがいかがだろうか。
同書ではむしろ学歴差以上に、企業規模別の生涯賃金の差を重視していて、例えば、男性大学・大学院卒の場合、企業規模1000人以上では3億3000万 円の生涯賃金が得られるのに対して、企業規模10~99人の小企業では2億3000万円に留まるとしている。その差は1億円だ。これは大きい。
しかしこのデータでいうところの、新卒で入社し生涯同じ企業に勤務し続ける「標準労働者」の姿が、近年少なくなりつつあることも事実だ。転職、出向、開 業など途中でコース変更する人も多いし、大学・大学院卒のフリーターも珍しくないご時世。フリーターであれば、学歴差はほとんど意味を持たなくなるし、逆 に高給与を求めて転職を繰り返した場合は、その結果が生涯賃金の差としてより強く反映することもあるだろう。
新卒採用・終身雇用という雇用スタイルが変化した今、最終学歴が生涯給与をほぼ決定してきたこれまでの日本企業の賃金構造もまた、大きく揺らいでいるのである。 こうした統計データを踏まえたうえで、今回、Tech総研が行った調査を見てみよう。調査対象は、30~35歳のエンジニア500人。学歴をみると、高校卒12%、高専・短大・各種専門学校卒17.4%、大学卒47.2%、大学院(修士・博士)23.2%となっている。
まず現在の税込み年収額について、33歳の人たちを例に比べてみる。33歳の平均年収は571万円。短大・各種専門学校卒が478万円と低い結果が出ているが、それ以外は、高校卒513万円、高専卒523万円、大学理系卒534万円、大学院修士理系卒673万円、大学院博士理系卒1300万円とほぼ学歴の順に高くなっている。前後する32歳平均、34歳平均でもほぼ同様な傾向が見られる。企業の新卒初任給は学歴別に構成されていることが多いが、その構造が30代半ばに至ってもほぼ継続しているという見方もできる。
年齢にこだわらず、最終学歴のみで今回の調査結果を平均してみると、中 学卒540万円(大学理系卒を100とした場合の指数:96)、高校卒548万円(同97)、高専卒519万円(同92)、短大・各種専門学校卒500万 円(同89)、大学文系卒541万円(同96)、大学理系卒559万円(同100)、大学院修士文系卒556万円(同99)、大学院修士理系卒662万円 (同118)、大学院博士理系卒717万円(同128)となっている。
DATA1 30代前半エンジニアの学歴別平均年収 | |
|
※空白は回答者なし。色つきは平均年収より上額 | |
●●コメント●●
0 件のコメント:
コメントを投稿