経済産業省は5月22日、組み込みソフトウェア産業の実態調査結果の2008年度版を発表した。同調査は2004年から行われており、今回で5回目。
調査対象は、経営者・事業責任者、プロジェクト責任者、技術者個人にそれぞれ分け、海外企業に関しても電話インタビューによる聞き取り調査を行った。有効回答数は、317事業部門(219社)、519プロジェクト、組み込みソフトウェア技術者個人1015人だった。
調査を担当した情報処理推進機構(IPA)の、ソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)組み込みプロジェクト プロジェクトサブリーダーの田丸喜一郎氏は、「組み込み製品の開発費と、組み込みソフトウェアの開発費は、いずれも増加傾向にある」と説明。組み込みソフ トウェアの開発費だけでも、調査を始めた2004年版では2兆円規模だったのが、2008年版では3.5兆円に増えていることを示した。
不足しているといわれ続けてきた組み込みソフトウェア技術者の人数に関しては、経営者が「不足している」とする人数が、調査を始めた2005年版 の7.1万人から2007年版では9.9万人まで増加していたが、2008年版では8.8万人と、初めて減少に転じた。不足人数を現状人数で割った不足率 も2006年版の49.0%から、2007年版では42.1%、2008年版では36.4%と、継続して減少している。また、組み込みソフトウェア技術者 の労働時間についても、200時間以上は約35%と多いものの、長時間化の傾向からは減少に転じている。
製品出荷後の不具合発生率については、「なし」が2005年以降、増加しており、2008年版では3割超となった。一方、「30%以上」も2005年以降、増加傾向にあり「二極化していた」(田丸氏)が、2008年版では減少に転じた。
組み込みソフトウェア開発の課題解決の有効手段について、事業責任者・プロジェクト責任者・技術者個人にそれぞれ聞いたところ、3者とも「技術者 のスキルアップ」がトップとなった。また、プロジェクトメンバーの職種構成の推移を見ると、ソフトウェアエンジニアは減少傾向にあり、テストエンジニア や、QAスペシャリスト・開発プロセス改善スペシャリストなどの「専門職」が増加傾向にあるという。
これらの結果について田丸氏は、「人材不足といわれていた組み込みソフトウェア産業だが、経営者も次第に『頭数ではなくスキルが重要』と考えを改 め始めた。中級レベルの技術者の育成に力を入れるようになり、専門職を増やした。テストを重要視していることも含めて、これらが不具合発生率の減少の要因 ではないか。不具合が減れば、労働時間も短くなる」と分析。その裏付けとして、事業責任者が重要と考えるスキルは「上流の開発技術や管理技術、コミュニ ケーションを始めとしたパーソナルスキルが多くなっている」と説明した。
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