2008-05-30

中国式だましのテクニック、詐欺はどのように発生するか

:::引用:::
MAO的コラム 中国語から考える 第55回-相原茂
                    
   詐欺師というと、身なりがよく、口がうまく、そのくせどこか落ち着きがない、というようなイメージがあった。実際に詐欺師に会ったわけではない。映画や テレビから得た印象にすぎない。しかし、今どきの詐欺師はそのイメージが思い浮かばない。大きな黒い「X」だ。電話、パソコン、メールなどを使って仕掛け てくる。顔は見せない。闇の向こうで笑っている。私たちが接するのは「言葉」ばかりだ。

  2007年、中国ではおよそ300万人が詐欺 の被害にあったという。詐欺の手口は日本と大同小異だが、それでもいかにも中国らしいのもある。「あなたが受賞しました」とか「表彰されることになりまし た」などというのは日本では少ない。中国ではいろいろな意味で「表彰活動」が盛んだ。「あなたは北京市優秀ビジネスマンベスト100に選ばれました」など と持ちかけてくる。これは「当選しました」でも同じだ。

  「我が社はこのたび中国進出営業利益100億突破を記念し、大感謝抽選会を行 いましたが、貴殿が幸運にも当選されました、賞金は10万元を用意しております、すぐにご連絡ください」。これで連絡すると、とりあえず個人所得税などの 諸費用がかかるので、何万元を以下に振り込んでください、それが確認され次第すぐに賞金をお送りします、というもの。

  さらによくある のは、銀行やクレジット会社の名義でメールがくる。「あなたは5月23日北京のウォルマートで2000元使いました。お問い合わせは××××(電話番号) まで」。このような銀行カード利用引き落とし通知みたいなものが送られてくる。当然、心当たりのない人は驚いて電話をする。すると待ち構えていたように、 銀行を装った相手方が確認のためにという口実で口座番号や暗証番号などを聞き出す、という手口だ。

  上海の人に「北京のウォルマートで」というのがミソらしい。北京でなんか使うわけがないから思わず気色ばんで問い合わせをしてしまう。このあたりうまく計算している。これは2年ぐらい前のブームだそうだが、当時なぜか使われるのは決まってウォルマートだったそうだ。

   高い通信費をだまし取る手口もある。やはりメールがくる。「あなたの友人が歌手○○さんの歌をリクエストされ、あなたに捧げるということです。是非、電 話をして歌をお聴きください」。これで電話をすると高額な通信費が取られたり、自動的にある月額制サークルへ申し込みをしたことになるというもの。

   メールには他にもさまざまな理屈がつけられる。反日デモが盛んだった頃には、日系企業への嫌がらせという名目も使われた。各大手日系メーカーの会社名と フリーダイヤルの電話番号が羅列されていて、「このフリーダイヤルに電話をすれば費用は企業が払うことになるから、電話をかけまくろう」といった呼びかけ があったそうだ。これは本当にいやがらせなのかあるいは通信費狙いの詐欺なのか。

  ウェブ上での商品の売買にからむ詐欺も少なくない。 自動車などを極端な安値で売りたいともちかける。「今、山東で勤務しているが、今度南方に転勤になるので車を処分したい」と持ちかけ、手付金や輸送代の名 目でお金をだまし取るもの。同一市内なら車とお金は現物取引できるから、北京と山東のように互いに離れていることが肝心だ。

  日本でもときどきあるらしいが、心理作戦型。「あなたの例の事件を公にせず解決するには、次の口座にお金を振り込んでください。これで円満に処理できます」。思い当たるところがある人は、ついお金を振り込んでしまう。

   以上は詐欺師が姿を見せないタイプだが、ふだんの生活の場でも「だまし」が潜んでいる。偽物をつくるのはお手のものだから、例えばコカコーラの王冠の裏 に「当選!2000元」というような当たりを印刷する。これを人の良さそうなお年寄りなどにみせて、「私はこの当たりくじを持っているが、これから故郷に 帰らなければならない。この賞金を無駄にするのはしのびない。ついてはこれを400元でいいから、買い取ってもらえないか」と持ちかける。ただのコーラの 蓋が400元に化ける。

  道に時計とか指輪のような高額商品が落ちている。それに目にし、拾おうとすると、脇から人が飛び出してきて言 う。「あなたが見つけたそれは、私もいま見つけた。だから私にも権利がある。二人で山分けしよう。この時計は高級そうだ。1万元はするだろう。私は500 元でいい。それで権利はすべてあなたに譲る」。あとで落ち着いて見てみると子どもだましのような時計。

  こういう事例を話してくれた中国人の友人は、「だから道に物が落ちていても、自分は近づかない」と言っていた。日本でも「この世にうまい話はない」といい、「君子危うきに近寄らず」という。

  かくも「創造的に頭をめぐらす」人々が居る中国である。こたびの四川大地震でもよからぬ思いをめぐらす輩がいる。義援金の旗印を掲げ、善意をかすめ取る詐欺に中国社会が頭を痛めていると聞く。

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