「銀聯」と書かれたロゴマークを都心の百貨店や家電量販店でよく見かける。聯は中国の字体で、日本の漢字にすると「銀聯(ぎんれん)」になる。実 はこれ、中国人観光客が買い物をする際に使うキャッシュカードのことで、マークは「この店ではカードが使えますよ」という誘いなのだ。【小倉祥徳】
東京・秋葉原の「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」。銀聯マークが売り場に大きく掲げられている。店内では、50歳前後の中国人男性3人が熱心に商品を選んでいた。彼らは、50万円する高級腕時計を三つ選び、銀聯マーク入りのカードを差し出した。
同店の今井勇次マネジャーは「10年前は安い商品でも値切るケースが多かったが、最近はほとんどなくなった」と語り、中国人の買い物熱に驚く。
銀聯カードは、中国政府主導で02年に設立された銀行間ネットワーク決済運営会社「中国銀聯」が認定したキャッシュカード。暗証番号を入力し、サインすると、中国の銀行口座から買い物額が引き落とされる。
中国の金融機関を中心に190社以上が参加し、中国国内で約15億枚の銀聯カードを発行している。海外に出る中国人の大半が銀聯カードを持つ。現 金の国外持ち出しが5000ドル(約50万円)相当に制限されているため、銀聯カードは、中国人が海外で高い買い物をするための必需品なのだ。
日本では、三井住友カードが中国銀聯と提携し、銀聯カードで代金を支払える日本国内での加盟店を募ってきた。05年12月に200店でスタートし、家電量販店や百貨店、ホテル、飲食店などに広がり、今年3月末には約1万店に達した。
西武百貨店は4月から池袋本店、渋谷、有楽町店でカードが使えるようにした。3店はここ数年、外国人への販売額が毎年10%以上伸びている。その 売り上げの4割以上が中国人観光客によるもので、最近は化粧品が人気だという。「銀聯カードで利便性が高まれば、さらに販売増が見込める」(広報)。都心 の百貨店や家電量販店の大のお得意は中国人観光客なのだ。
国際観光振興機構(JNTO)によると、日本を訪れる中国人観光客は経済の急成長を背景に、05年65万人、06年81万人、07年94万人と急 増している。目的のトップは「ショッピング」で、家電量販店や百貨店での買い物が観光の定番だ。今年3月には、2人以上の個人旅行が解禁され、100万人 の大台突破は時間の問題だ。
一方、中国を訪問する日本人も急増している。06年には375万人と米国を抜いて国別で1位になった。
三井住友カードは昨年12月、日本人向けの銀聯カードの発行を始めた。中国の加盟店約70万店で買い物ができる。中国ではVISAなど国際ブラン ドのカードを使用できる店舗は約20万店といわれ、加盟店数は銀聯カードがナンバーワン。同社は、今夏の北京五輪や2年後の上海万博をにらみ、年間5万枚 の発行を見込んでいる。
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