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日本の台湾に対する窓口機関である交流協会は、大使に相当する斎藤正樹・同協会台北事務所代表の辞任を承認し、次期代表に前沖縄担当大使の今井正氏を充てた。斎藤代表の辞任は5月に台湾の大学での講演で「台湾地位未定論」に言及したことが、国民党政権の怒りに触れ、日台関係に水を差した背景がある。速やかな関係修復と強化発展を望みたい。
「地位未定論」に反発
斎藤氏の辞任は、外交上の結果責任を問われたものだ。しかし同時に、わが国の影響力が低下しており、台湾に対する関心の薄さや、中国に比べ関係構築の努力不足も自戒すべきだ。
台湾は親日的であり、民主化も成功裡に運び、政権交代システムも機能する健全な民主主義体制を実現している。観光・産業をはじめ、近接する大切な交流相手として、互いに政権交代にかかわらず重視していくべきである。
しかし、わが国の敗戦を境目にした中国大陸の覇権を争う国共内戦の帰結、その後の国際外交上の敗北など台湾の複雑な歴史と、民主主義の所産とも言うべき目下の与野党対立から、台湾自身の地位をめぐる問題は最も緊張した政治争点である。これに触れる発言を旧統治国の大使相当の人物がすることは相応のインパクトがある。
それ故に、台湾の政争を惹起じゃっきし、発言を嫌った国民党政権から抗議され、馬英九総統から面会を断られた。独立派が支持する民進党による前政権時代ならば、問題がここまでねじれることはなかったであろう。しかし、台湾の政情や民意が選択した現政権を刺激することが日台交流の目的ではないはずだ。
確かに、日本は敗戦による占領下から国際社会に復帰する際、サンフランシスコ条約で台湾に対する「権利、権限及び請求権を放棄」したが、返還先は明記されなかった。その他、当時の国際法の経緯から「地位未定論」は成り立つ。だが、問題は外交的にこれを発言すれば国民党政権の存立にかかわるため、結果として台湾をますます中国側に追いやることだ。
先の総統選前から国民党は対中接近を主張し、馬政権発足から大陸の経済活力に期待する融和政策を進めてきた。そこへ、米国発の世界不況の打撃を受ける日本の存在感が弱まっている。中台交流で大陸からの人・物・カネの流入に圧倒されれば、中国の歴史感情に共感した反日愛国主義の醸成や政治姿勢への影響が心配だ。
NHKスペシャル「シリーズJAPANデビュー」など歴史の“作り直し”に、良識ある台湾人が事実に基づかないとして10月に提訴した。このような対日理解があるうちに、台湾との健全な交流を強く発展させ後世に継続させるべきだ。
政府は活発な外交を
馬総統は交流協会人事発表後、日本の報道機関と会見し、日台関係重視を表明した。また、日米安保体制が台湾にとっても重要であるとの見識を述べている。東シナ海を自由の海にするためにも日米台の関係強化が必要だ。民主党政権は中国だけでなく、台湾に対しても与党外交を活発に行うべきだ。
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