2009-12-09

焦点:COP15、環境分野で日本企業はビジネス拡大の好機に

:::引用:::
[東京 7日 ロイター] コペンハーゲンで7日開幕の国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)では、環境技術を世界に売り込む仕組み作りが日本の重要なテーマに浮上してきた。

 鳩山由紀夫首相が掲げた温室効果ガスの排出削減に関する数値目標(2020年までに1990年比25%)は国内対策だけで達成が困難だが、世界最高水準の省エネルギー技術による国際貢献が削減要因として認められるよう道筋がつけば、可能性は高まる。数値目標の決着だけはなく、環境を軸とした成長戦略への期待感が高まるような合意が得られるかどうかという視点でも、交渉の行方を注視する必要がありそうだ。

 <数値目標は決まる可能性>

 COP15では、京都議定書の削減期間(2008年―12年)以降の温室効果ガス排出削減の国際枠組み(ポスト京都)作りで合意を目指す。地球温暖化防止という目的で成果を上げるには、世界最大の排出国で現在は削減義務がない中国と、同2位の排出国で京都議定書から離脱した米国が、それぞれポスト京都の枠組みに参加するかどうかが焦点となる。

 今回のコペンハーゲン会合では、法的拘束力のある議定書の採択には至らず、ガス削減目標と途上国への資金支援を含めた「政治合意」が行われるとの見方が支配的。ただ、政治合意とはいえ「単なる精神規定ではなく、その後の法的合意につながるきちんとした内容が得られると思う」(日本政府関係者)との指摘もある。削減数値目標だけではなく、どのように削減を測定・報告・検証するかや、米中などによる削減目標が「義務」として扱われるかどうかなど重要な争点の方向性がみえてくる可能性があるという。

 <突出する日本の25%削減>

 一方、鳩山首相が打ち出した日本の削減目標に対しては、米国や中国など主要排出国に比べて突出して高い数値になっていることに加え、省エネが進んでいる日本では国内対策だけで削減を進めると大幅にコスト高になるのは確実で、何らかの緩和策が伴わないと産業競争力の低下につながりかねないといった懸念も指摘されている。

 主要排出国がすでに発表した20年までの温室効果ガスの削減目標は、05年比で17%減とした米国は90年比でみると3%減程度。中国は20年までにGDP当たりの排出量を05年比で40―45%改善させると表明したが、経済成長を続けた場合、20年での排出総量は05年比で2倍近くに増えるとの試算もある。 続く... 欧州連合(EU)は90年比20―30%と、削減率でみると日本ときっ抗した水準だが、この背景には、1)英国は90年代にCO2排出量の少ない天然ガスへのエネルギー転換を進めた、2)ドイツは90年の東西統一により旧東独地域においてエネルギー効率の悪い設備を更新することで削減がしやすい、3)日本では一般的だったゴミの焼却処理が欧州でも進み、温暖化効果が二酸化炭素(CO2)よりも大きいメタンの排出が抑えられた―─などの要因で、90年実績と比較すると欧州は削減率が高くなる傾向がある。

 鳩山首相は9月の国連演説で、25%削減について「世界の主要国の参加による意欲的な目標の合意が、日本の約束の前提になる」と述べ、日本が無条件でこの削減率を掲げるわけではないと強調している。COP15でどのような合意があれば首相が挙げた条件を満たしていると判断するのかや、条件が満たされなかった場合に25%の目標を下げるのかといった点について政府の方針は不明だが、国際公約とした受け止められた25%の削減目標をCOP15で引き下げることはかなり難しいとみている模様だ。

 <削減クレジット獲得の手法拡大に知恵を>

 20年までの中期目標が25%削減で決まった場合でも、国内対策だけでは「コストが高すぎるので達成は非現実的」(環境省関係者)とされる。「25%の削減幅自体に異論はないが、10年間での達成は非常に難しい」というのが、産業界全般の受け止め方だ。産業界の士気を損なわないようにするためには、より柔軟で幅広い削減手法を確立する必要がある。

 具体的には、京都議定書で認められた仕組みで、海外で削減事業を進めて効果を「削減クレジット」として目標に繰り入れる「京都メカニズム」の拡大・強化をCOP15で主張する必要がありそうだ。現行の京都メカニズムでは、海外での削減事業をクレジットとして認定する国連の専門委員会による審査が「厳格すぎる」(日本政府関係者)とされ、日本の産業界からも使いにくさを訴える指摘が目立っていた。

 25%削減の政府方針に衝撃を受けた産業界だが、COP15が近づき削減数値の設定が現実味を帯びるにつれ「日本企業は炭素クレジット市場を積極的に利用しようという姿勢に転じている」(クレジット市場関係者)といった指摘も聞かれる。

 今後、世界規模で普及拡大が見込まれる環境対応車や太陽光発電パネルを増産するにあたって、日本企業に有利な仕掛けをCOP15で作ることができるかどうかも焦点だ。エコ製品を量産すれば、生産国ではCO2排出が増え消費国では排出が減るが、生産過程で生じたCO2を生産国と消費国で分担する仕組みなどが想定される。中国や韓国といった同様のメリットが得られそうな工業国とCOP15で連携する必要があるかもしれない。

 富士通総研の生田孝史・経済研究所主任研究員は、ポスト京都時代の日本のあり方について「25%削減ではなく15%削減だって楽ではない。日本国内だけで削減するのではなく、海外のプロジェクトに参加する必要がある」と指摘。その上で同氏は「他の国を(ポスト京都に)巻き込み、そこに省エネ技術を売り込むべきだ。日本はもう環境関連の強化を目指すしかないのだから」と強調した。

 (ロイター日本語ニュース 浜田健太郎、取材協力 村井令二、前田りさ:編集 田巻 一彦)
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