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先月末、台北で開かれた2つの大学生向け日本語コンテストの審査員を依頼され、彼らの熱意と水準の高さに感心した。昨年5月の馬英九・中国国民党政権の発足以来、日台関係はぎくしゃくした状態が続いているが、将来の担い手である台湾の若者はいたって親日的だ。こういう時こそ日台の民間交流、とりわけ青少年交流にさらに力をいれるべきだとの思いを強くした。
11月28日は台湾の日本研究者で構成する台湾日本研究学会(何瑞藤理事長)、翌29日は日本航空がそれぞれ主催する日本語コンテストが続いた。土日の午前9時開会という筆者にとり少々つらい日程だったが、どちらも会場を包む緊張感で眠気は一気に吹き飛んだ。
前者は審査員が事前に準備したテーマを15分前にくじで決め、3分前後の即席スピーチにまとめる方式で、90人の応募者から予選を通過した22人が競った。
後者は1984年から26回を数える“草分け”で、事前に応募者が4分間の手書きスピーチ原稿を提出。書類審査で選んだ16人のスピーチと、審査員質問への応答ぶりで優劣を判定した。難度の高い前者には大学3、4年生、後者は2、3年生の応募者が多かった。
最も印象に残ったのは、後者のコンテストで20歳前後の台湾の男女が手書きした日本語の美しさだった。文章がほぼ完全な日本語文になっているのは、指導教授の熱心な指導もあるだろうから、そう驚かない。
しかし「文は人なり」。どの文章も一字一句をおろそかにしない心のこもった端正な漢字やひらがなが、原稿用紙のマス目にきちんと収まっているのに感心した。
旅や家族愛、学校生活など身近なテーマが中心だったが、日本語の特長ともいえる細やかな感情表現や季節感、情緒豊かな文章が多かった。こうした台湾の若者のウエットな感性は、政治志向の強い中国大陸の人より日本人に近いようにも思える。
日本研究学会の即席スピーチは、くじ引きしたテーマの向き不向きもあり、出来栄えの差が大きかった。それでも上位3人は難問をほぼ完璧(かんぺき)にこなして実力をみせつけた。両コンテストを通じ「果たして日本の大学生の何割が彼らと互角に競えるか」と考えさせられたほどだ。
日本の在台代表機関、交流協会台北事務所の2006年度調査では台湾の日本語学習者は約19万人、(調査回答率の低い)民間塾を正確に把握すれば、さらに増える。
「1990年代初めに日本のテレビがみられるようになり、ケーブルテレビが日本ドラマを大量に流し始めた。これを機に若者中心に日本語ブームが始まった」(落合由治・淡江大学副教授)
この時代に日本の文化・風俗への関心から日本語を学び始めた多くの若者が、今や30~40代となって日本語教育の中心となりつつある。教え子が今年の日本航空コンテストで入賞した羅暁勤・銘伝大学助理教授もそのひとりだ。
日本に10年近く留学した羅さんはいま、日本の地方都市との青少年交流に力を入れている。「地方都市ほど日本の伝統文化が根付き、学生の日本への関心を深めやすい。しかも先方が台湾との交流に熱心だ」(同)からだ。
交流協会調査(2009年4月)でも李登輝・陳水扁政権時代の教育を受けた青年層が「最も親日的」との結果が出ている。日本は未来あるこの世代をもっともっと大事にしたいものだ。
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2009-12-09
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