2009-12-09

日中コンテンツビジネス事情-産業台頭と人材などに課題

:::引用:::
  今、日中共に、国を挙げてコンテンツ産業の発展に力を注いでいる。このビジネス分野で日中連携の実態がどのようになっているか、さらには、この連携を上手く推進するプロデューサーの役割を考えてみたい。

コンテンツ産業の台頭

  コンテンツ産業とは、映画、アニメ、ゲーム、音楽など、人々が豊かな生活を送る上で価値のある情報を提供していく産業である。日本の市場規模は13兆円を越えるまでになっている。コンテンツへの注目は、2003年に小泉内閣が国家戦略として知的財産を重視し、その一部としてコンテンツビジネスの飛躍を訴えたことに始まる。日本のコンテンツそのものは良くても、国際的なビジネスとして必ずしも上手くいっていないからである。

  国家戦略として力を入れている理由は、デジタル化に伴う市場の飛躍的発展、さらには流通業、観光、様々な産業に波及する効果を持つからである。また、コンテンツは文化的な背景に依存する部分もあるので、海外に対する国のイメージを向上させる役割を担う。つまりはソフトパワーの発揮である。このようなコンテンツビジネスを上手く推進するには、コンテンツの企画から販売までを全体的に統括するプロデューサーの役割が大きい。

  中国側のコンテンツ産業も、プライスウォーターハウスクーパースの報告書によれば、2005年の市場規模は600億6800万ドルで2006年から2010年まで年平均で 18.0%と驚異的な伸び率が予測されている。中国ではコンテンツを文化産業と位置づけ、2000年にこの分野の重点化を謳い、その後も国を挙げて力を入れ、国家クラスアニメ基地(国家動漫基地)を数多く設けている。

日中コンテンツビジネスの課題

  少子・高齢化が確実に進む日本では、アジアとの共生なくして企業の発展はありえない。とりわけ、経済成長の著しい中国とのビジネス連携は大事になってくる。一般的に、日本の製造業は中国進出に極めて積極的であるが、われわれの昨年8月の日本のコンテンツ企業へのアンケート調査で回答された44社の調査結果を見ると、「非常に積極的に進出していく」(9.3%)と「積極的に進出していく」(18.6%)で3割弱、「どちらとも言えない」(32.6%)は3 割強、そして「余り積極的に進出しない」(25.6%)と「全く進出するつもりはない」(14.0%)で約4割を占めている。アニメ、ゲームを中心に、3 年後、中国市場は約3.3倍になると認識しながらも、中国への進出を躊躇しているのが実態である。

  この根本的な理由は、中国側の文化産業の色彩を強くした規制の強化(海外アニメのゴールデンタイムの放映禁止など)によるが、前述の調査結果から見ると、「違法コピーなどの知的財産権の問題」(37.9%)と「良いパートナーを見つけるのが困難」(24.1%)を挙げる企業が多い。著作権に絡む海賊版の問題の深刻さを示している。中国を含めてアジア全体として、この大切さの共有を政策的に進めていくことが不可欠である。また、日中でビジネス連携するにも、お互いに信頼できるパートナーを見つけなければならない。このために、行政を巻き込んで、企業横断的な研究会のような機関が、日中のビジネスマッチングの機会を設けていく必要がある。ポイントは、シナジー効果を発揮できるような連携が組めるか否かである。制作コスト削減面での中国企業の活用、日本コンテンツに対する中国消費者の旺盛な需要に応える市場開拓、さらには、中国の若者に人気のオンラインゲームや携帯への二次利用などによる急激な市場拡大に備えた連携などが考えられる。

日中コンテンツビジネス・プロデューサーの役割と育成

  前述のアンケート調査によれば、日中のブリッジパーソンとしての役割も担うプロデューサーの能力として、真っ先に挙がってくるのが「相手国の文化を理解する能力」(23.1%)であり、「語学力」(12.8%)以上に多い。もちろん、「コンテンツビジネスの構想・企画力」(17.9%)や「コンテンツの良し悪しを判断できる目利き能力」(15.4%)は大事であるが、コンテンツの背後にある文化あるいは商習慣の違いなどを理解する能力が必要になる。従って、プロデューサーの役割としては、「日中間のコミュニケーションを取れること」(47.2%)と「中国側との交渉力」(36.1%)を挙げる企業が圧倒的に多い。

  なお、興味深い分析結果として、中国へ積極的に進出しようとする企業ほど、プロデューサーの育成方法として「日本でコンテンツ専門教育を受けた中国人留学生を採用」する傾向にある。日本で学び、日本文化に触れた留学生を育成していくことが、今後の日中のビジネス連携の成功の鍵になるかもしれない。(執筆者:池島政広 亜細亜大学大学院アジア・国際経営戦略研究科委員長・教授)
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