中国が成立した10月1日をはさんだ1週間は「国慶節」と呼ばれ、1週間の大型連休となる。中国内で働いている日本人も休みになるので、筆者は広東省で働いている友人を訪ねにいってみた。そのついでに広東省の電脳街を見にいったのだが、そこではなんとも怖い経験をすることになった…。
まず、地理的な話をしておこう。広東省は中国の南部に位置し、香港と接している。香港は1997年に英国から中国に返還されたが、両地域の境目には国境があり、行き来するには入出国の審査が必要になる。中国人であってもパスポートや通行証がないと、香港には入れないのである。なお、日本人はビザなしで香港に90日間滞在できるが、中国人はパスポートや通行証を所持していても7日間しか香港に滞在できない。自国の都市なのに、中国人は外国人よりも長期滞在ができないというのは、なんとも変な話である。
香港と接している中国側の都市が深セン(センは土へんに川)。中国に詳しくなくとも名前くらいは聞いたことがあるかもしれない。深センは、香港との境にあることで発展し、北京語が飛び交う移民の街だ(広東省だと方言が多い)。狭い地域に多くの人が住んでいる香港は不動産が高いが、それを嫌って深センに住む香港人も多い。そのため国境越え通勤が当たり前の光景としてあり、朝夕はサラリーマンによる“国境越えラッシュ”が起きている。深センの香港に近い地域では高層ビルが立ち並び、上海と並んで中国本土の金融センターの都市としても機能している。一方、香港から離れた地域では工場が立ち並び、世界の工場と呼ばれる光景を見ることができる。 前ふりが長くなってしまったが、まずは香港の電脳街を紹介しよう。香港の電脳街はいくつかあるが、その中で観光として行くのに最もオススメなのが、深水■(■は土へんに歩)というところ。地下鉄でアクセスでき、街の中心部からそう遠くない。電脳街の周りは庶民的なネットカフェあり、ゲームセンターあり、ショッピングセンターあり、食堂ありといろいろ楽しめる。
電脳街は黄金電脳商場や高登電脳商場をはじめとした、ビルの1フロアまるごとPC・ゲームショップである「電脳商場」からなる。筆者が行ったときは、特に国慶節だからといって特価セールをしているお店は見かけなかった。特価セールはしていないものの、休日ということで、普段よりも多くの客でにぎわっていた。今回、街を歩いて感じたのは、半年前、1年前に比べて、電脳街がパソコンの街からゲームの街に変貌してきているということ。ゲーム熱が高まっているということもあるのだろうが、中国内では所得水準が高い香港なので、すでにパソコンが欲しい消費者はそれを手に入れているのだろう。ちなみにざっと店舗を見た限りでは、Wiiを扱っているお店が多かった。
ゲームに比べて元気のないパソコン関連商品だが、大容量の3.5インチ型外付けハードディスク(HDD)や、2台のHDDを入れてRAIDが組めるRAIDユニットなどをずいぶん見かけるようになった。以前当連載で外付けHDDが人気になるスキャンダルを紹介したが、その影響かもしれない。 次に深センの電脳街を紹介しよう。深センの電脳街は地下鉄「華北路」駅からすぐ。数年前まで地下鉄がなかっただけに、現在はアクセスが非常によくなった。深センの電脳街は、特設テントを構えてアピールするメーカー代理店もあり、国慶節商戦真っ只中、といった感じを受ける。
深センの電脳街も、他の電脳街と同様、PCショップが詰まった大きな電脳ビル数棟と、その周辺のビルの1階に入っている小さなPCショップから構成される。ただ、深センの電脳街では、ICやLSIやメモリチップなどを販売する電子パーツの店が多数あるといった特徴もある。電脳ビルのひとつは、下の階が電子パーツフロア、上の階がPCフロアになっており、パーツフロアは店が閉まっているが、上の階のPCショップは営業しているといった状態だった。パソコンや関連製品のフロアには、連休中なので学生や若い社会人がやってくるのだが、電子パーツの方は工場が休みなのでそれを必要とする人が買いにこないため休業するのだ。同じビルなのに入り口は真っ暗、エスカレーターで上に行くと盛況とはなんとも不思議な光景である。さて、山寨機という言葉はご存知だろうか。ノンブランドの携帯電話のことなのだが、最近ではこれを使っているユーザーが増えてきている(山寨機に関しては、記事1、記事2、記事3、記事4などを参照)。ここ深センには山寨機を作っている小さな工場がたくさんあるので、山寨機だけを扱っている店舗が集まった「山寨機ビル」や、山寨機を作るための部品を売っている店舗が集まった「山寨機部品マーケット」が存在する。
山寨機ビルは電脳街よりも盛況で、多くのお客さんでにぎわっていた。各店で売られているケータイは、似たようなデザインが多いものの、何が売られているか分からないため、お店をのぞいて見るだけでもかなり面白い。そんな様子を写真に収めていた筆者に、怖いことが起こった。いきなり店のガードマンに山寨機ビルの事務所らしき場所に連れていかれてしまったのだ。普通は写真がNGの場所では、ガードマンに「撮るのやめて」と注意される程度だが、まさかいきなり事務所に連行されるとは思わなかった。緊張しながら「外国人です。観光客です」とカタコトの英語で説明し、中国語が分からないフリをしてごまかしたのだが、事務所にいた迷彩服を着た怖そうな人に、中国語で「何のケータイか知っているのか!」「何のケータイと知っていて撮っているのか!」と散々怒鳴られた。最後に、山寨機ビル内部外部の写真を消すように指示され、それを実行したところでようやく解放された。事務所の人の質問を聞くに、「山寨機はNGなもの」と知っていて、それを隠しているように思える。
そんなわけで山寨機ビルは、ディープで面白いものが見られるが、デンジャラスでもあるので、中国に慣れていない観光客は入らないほうがいい。まして、カメラなんか構えた日には、大変なことになってしまう可能性があるので、ビルに入るときはくれぐれもカメラをしまっていこう。
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