2008-05-08

インドの労働力不足深刻 農業にも波及 経済成長目標に懸念

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 深刻な労働力不足が高成長を続けるインド経済の一大脅威に浮上してきた。政府は外国企業誘致などを狙いに電力をはじめとする大規模な経済インフラ整備を 進めているが、これを契機に全土で建設作業員の需給が逼迫(ひっぱく)。政府は8%超の成長目標の見直しを迫られる可能性がある。一方、農業部門の労働力 が公共部門にシフトし、農産物の収穫も落ち込む見通しで、国際的な食料価格を一段と押し上げる心配も出ている。

 ≪非熟練者8割≫

 インドや欧米メディアによると、インド政府は外国企業誘致や工場建設を促進し高成長を維持しようと、6年間にわたり年600億ドル(約6兆2400億円)以上を投資し、発電所や港湾などのインフラ建設を加速する計画を進めている。

 インフラ整備には9200万人の労働者が必要とみられているが、労働者は商業ビルや住宅建設など民間部門だけでも必要人数の3分の1が不足。しかも熟練 労働者の多くは建設ラッシュに沸くアラブ首長国連邦(UAE)のドバイやシンガポールの高賃金を目当てに出稼ぎ労働をしている。

 労働者全体の8割はシャベルの使い方を一から教える必要がある非熟練労働者という。インフラ整備は2008年度(08年4月~09年3月)成長を8~8・5%とする政府目標の前提になっているが、計画通りに進めるのは容易ではない。

 チダムバラム財務相は最近のメディアとのインタビューで「熟練労働者が不足しており、8%超の成長には労働力の供給を引き上げる必要がある」と語り、労働力不足が、政府目標達成の足かせになりかねないとの懸念を表明した。

 ≪農場は閑古鳥≫

 建設部門の人手不足は、同国最大の人口を抱える農業部門にも波及している。

 年5000万トンを生産する紅茶の一大産地、アッサム州南アッサム地方では紅茶農園の労働者が公共工事部門に大量に流出し、農園は頭を抱えている。

 インドには農家を対象に公共工事などで年間最低100日間の雇用を保証する「地方雇用保障制度(NRGES)」があるが、政府のインフラ整備計画で工事 が増えたため、同地方では対象が紅茶農園にも拡大。農園の日当約55ルピー(約150円)に対しNRGESは77ルピーと約4割も高く、農園を選ぶ労働者 は激減した。相場や作柄に恵まれながら目の前に迫った今年の収穫期はほとんど人手を確保できていないという。

 主食の小麦生産はさらに深刻だ。NRGESに人手を奪われ、昨年の収穫期に支払っていた1エーカー当たり賃金1500~1700ルピーを大幅に上回る 2500ルピーを提示しても人が集まらない状況が続いている。雨期には、収穫物をただちに集積所に運ばないと降雨で甚大な被害が出る心配がある。

 穀物輸出国のインドはすでに最近の食糧価格上昇に対応し主要穀物の輸出規制に踏み切っている。人手不足で穀物生産が落ち込めば、国際相場を押し上げ、世界的な食料インフレが一段と加速することになる。
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