コムスンは、グループホームや有料老人ホームなど施設事業も手掛けた。引き継いだ二社では、訪問事業と対照的に職員の賃金引き上げに動いている。介護業界の深刻な人材不足が影響している。 (広川一人)
「先月から、『ニチイもコムスンと賃金が変わらない』と離職者がでてきた」
施設事業の大半を引き継いだニチイ学館の北村俊幸施設介護事業担当は、こう打ち明ける。同社は、事業継承時の契約で一年程度変えない方針だった賃金の引き上げに着手した。
「診療報酬改定で看護師を集める病院が増え、介護分野に集まりにくい」(北村担当)状態になった。そのためまず看護師の賃金アップをした。非常勤職員、常勤職員も引き上げる。
昨年十一月、同社が引き継いだのは介護付き有料老人ホーム「コムスンホーム」、グループホーム「コムスンのほほえみ」の計二百三十施設、職員は七千五百人。
継承施設のうち、コムスンの指定打ち切り処分発覚後に凍結されていた計画中の施設が二十一あった。事業継承後に計画を改め、今年二-四月で十六施設が運営開始し、残る五施設も六月までに開業にこぎつける予定だ。
入居者はほぼ計画通りに増え、一部グループホームでは待機者を出すほど。訪問介護より収益性はいいといわれるが、実は継続して働く正規職員の確保が厳しい。
施設介護には泊まり勤務などもある。訪問介護より、介護を専門にしようという正規職員が多く求められる。それだけに人材確保は簡単ではない。
しかも激務から介護分野の就職希望は減っている。これまでは系列養成講座受講者の採用などで職員を補ってきたが、昨年の受講者は六万三千人でピーク時の半分以下だ。特に都心部の人材不足が深刻で、今まで行わなかった職員の一般募集を始めた。
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高級有料老人ホーム「バーリントンハウス」と介護付き有料老人ホーム「コムスンガーデン」計六施設を引き継いだゼクスグループも、キャリアアップや職責に見合った賃金見直しを検討中だ。グループで統一するか旧コムスン職員だけが対象か未定だが、六月にも実施するという。
昨年十二月の継承時、コムスンガーデン四施設の旧コムスン職員は、百四十九人から十人の退職で済み「特別な人材確保策は取らずにすんだ」(ゼクス広報部担当者)。
だが、同担当者は「慢性的な人材確保難から今後は心配している。特に人材が集まらない都市部の施設運営では懸念がある」と明かす。
入所者にもサービスの低下など大きな影響はなかったという。引き継いだ介護付き有料老人ホーム四施設のひとつでは、最大九十人余りいた入居者のう ち、昨年六月の指定打ち切り処分発覚後に十数人が退去した。職員の離職はなく、残った入居者七十八人(三月現在)ともども「コムスン時代のまま」と小嶋佳 世ホーム長は話す。
処分発覚後、同ホームは、新規契約など凍結。継承業務が一段落した今年二月に入居募集を再開した。小嶋ホーム長はこう希望を話す。「騒動の間、元気づけるようにイベントを積極的に開いた。今は職員に介護職の誇りを取り戻したい」
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