中国からの観光客数が伸びている。団体での旅行が一部解禁になった平成12年から急増し、今や韓国、台湾に続き、年 間94万人が訪日している。観光や買い物が主な目的で、中国の富裕層がその牽引(けんいん)役とみられる。東京・銀座の百貨店などは中国語サービスを強 化。日本の先端医療を受診するメディカルツーリズムの企画も出現するなど「チャイナ・マネー」を取り込む動きが活発化している。(柳原一哉)
朝の東京・銀座のメーンストリート。ひっきりなしに観光バスがとまり、中国からのツアー客がブランド店やデパートへと吸い込まれていく光景は、もう珍しいものではなくなった。
三越は「銀座店を筆頭に、昨冬から中国人客の姿が目立ってきた。化粧品やブランド品など、中国国内で売っていないものが売れ筋。銀座ツアーの一つに組み込 まれて来店されているようだ」(本社広報)という。同店を訪れた中国人男性客(21)は「山東省から来ました。カメラや腕時計を買って帰るつもりなんで す」と盛んな購買欲を見せていた。
飽和気味とされる百貨店業界にとって、中国の富裕層は大切なお客さんだ。三越では免税カウンターに中国 語が堪能な係員を置いたり、中国語の店内案内パンフレットを配るなど対応を強化。銀行口座から直接代金が差し引かれる日本のデビットカードにあたる中国の 銀聯(ぎんれん)カードを利用できる端末機をいち早く設置したことも来店を誘っているという。高島屋でも先月、東京や大阪などの5店舗で、中国語に対応できることを示すバッジをつけたスタッフ計23人を配置した。
◇国土交通省の外郭団体、国際観光振興機構(JNTO)によると、これまで中国では日本の親族訪問や身元保証人が日本にいなければ自由に訪日できなかった。 だが平成12年、団体旅行であれば北京、上海両市、広東省に限って訪日が可能となり、その後、段階的に“解禁”され、中国全土が対象になった。訪日者数も 12年の約35万人から昨年は約94万人に急増。アメリカの81万人をしのぎ、韓国の260万人、台湾の138万に続く第3位の座にある。
旅行者の多くは富裕層とみられる。平均的パッケージツアーでも8万~15万円と、月給が1万円以下も珍しくない中国では破格の大金だ。しかも中国側の旅行会社は「失踪(しっそう)防止」のため1人当たり数十万円の預かり金(デポジット)をとるという。
そうした富裕層に照準をあて、SBIグループのSBIウェルネスバンク(東京都港区)とJTB東京、中国などが提携して企画したのが健診ツアーだ医療水準の高い日本で、がん検査など健康チェックを受けるためのツアーで、都内の榊原記念病院、東京女子医大付属青山病院、大規模ながん専門病院 と連携。PET(陽電子放射線断層撮影)、CT(コンピューター断層撮影法)などの最先端医療機器を駆使し、脳を含め全身をくまなく点検。必要があれば治 療の手配もできる仕組みだ。
6泊7日のツアーは、通訳がつき、観光も含めて1人約300万円と高額。だが中国のベンチャー企業トップらの関心の高さに手応えを感じており、今月中に北京で説明会を開き、7月にも10人規模の第1弾のツアーを実施。年内に計3回実施する計画だ。
SBIの福澤雅彦代表取締役は「日本人が比較的安価に済む東南アジア諸国で医療を受けるメディカルツーリズムは珍しくないが、今回の企画はその逆の珍しいケースだろう」と話す。今後、急成長を続けるロシアの富裕層も対象に「同様の企画をしたい」と意気込む。
JNTOの薬丸裕シニアアシスタントマネジャーは「韓国や台湾と異なり、人口の多い中国からのツアー客はまだまだ伸びしろがあり、増加が期待できる」とみている。
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