2008-04-22

オフショア開発:技術力と日本語力、どちらを重視?

:::引用:::
◆技術より日本語力で評価する企業に未練はない?

  先日、日本経済新聞(2008年4月20日発刊)の「漂流ニッポン:人を魅了する国に」で、次のような記事を読みました。

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インドで就職説明会を開く日本のシステム開発会社は、思うように人材が集められなくなった。3年前までは1000人が詰めかけたが、今では何度も勧誘メールを出してようやく150人程度。~(中略)~日本のIT企業で勤務経験を持つ、あるインド人技術者は「技術より日本語力で評価する企業に未練はない」という。(以下省略)
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  私は、この記事で紹介されたインド人技術者の「技術よりも日本語力で評価する企業に未練はない」という言葉がとても気になりました。インドも中国も、日本から見れば、オフショア開発相手国の二大国家です。この記事では、インドの事例が紹介されていましたが、中国ではどうなのでしょうか?

  過去、本コラムの第7号「日本語対応力で圧倒的にリードする中国オフショア開発」でもご紹介した通り、中国は他の諸外国に比べ、日本語対応力が高い技術者が多いのは確かです。しかし、需要と供給のバランスから、日本語力が高い技術者は不足気味であることは言うまでもありません。したがって、知名度が高くない企業が一般公募しても、日本語力の高い技術者を採用することは非常に困難になってきています。

  では中国のソフトウェア企業は、どのような基準で技術者を採用、昇格させているのでしょうか?

◆経営方針「日本語力最重視」と「技術力最重視」

  日本向けのシステム開発を主要事業にしている企業は、全般的に日本語力重視であることは変わりないですが、各社の業界における現在のポジションや経営方針により、「日本語力最重視」という企業と「管理力・技術力最重視」という企業に分かれるのではないかと思います。

  ある企業では、技術力よりも日本語力の高い技術者を優先して、採用、昇格させる明確な方針を持って運営しています。同社の経営者は、「日本企業は、日本語対応力に根強いニーズを持っている。お客様のニーズに合った人材を採用、確保するのは、当然のことである」と考えています。確かに一理あります。

  一方、ある企業の経営者は、「我々は、日本語力よりも技術力、管理力を優先する。日本語力も確かに重要だが、中期的に考えると、中国ソフトウェア企業は、今よりもさらに『質』の勝負になっていくはずである。したがって、技術力や管理力を優先すべきであると考えている」と明言しています。これも確かに一理あると思います。

◆極端に「日本語力重視」になり過ぎると?

  私個人的には、確かにお客様のニーズに応えるには、日本語力も重要ですが、あまり極端に「日本語力重視」になり過ぎでも問題があるのではないかと思います。なぜならば、技術力、管理力が高くても日本語力が高くない技術者が定着しづらくなり、いつの間にか、気がついた時には、企業全体的に日本語力は高いが、技術力や管理力は平均レベルあるいはそれ以下の企業になってしまいます。これでは本末転倒、あまり魅力ある企業ではなくなってしまいます。

  一方、いくら技術力、管理力が高くても、日本語力が低ければ、顧客のニーズに応えられないのも現実です。

  やはり、どうしても、技術力、管理力、日本語力の全てが必要になります。しかし、これらの全てのスキルを兼ね備えている技術者は非常に少ないため、日本語の研修制度や技術力強化のための情報共有化のしくみ作り、プロジェクト管理制度の整備、強化等々が非常に重要なのではないかと思います。
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