【北京=鈴木孝昌】聖火リレーをめぐる混乱に抗議する中国国内の反欧米デモが拡大する中、中国当局は二十一日、国営メディアを総動員して「理性的 対応」を呼び掛けた。当初は高まる民族感情の“ガス抜き”としてデモを容認したが、デモの拡大が社会不安や政府批判を招く恐れがあると判断。デモをこれ以 上激化させない方針を明確にした。
中国政府筋は本紙に「愛国主義はもろ刃の剣。行き過ぎると自らを傷つけることもある」とし、当局内で懸念が強まっていることを示唆。「今後は五輪を成功させることが最大の愛国主義だと訴えていく」と語った。
十八日に青島、昆明などで始まったデモは全国十数カ所に拡大。合肥では仏系スーパー前に多数のダンプカーが押しかけるなど過激化の兆しも。二〇〇 五年の反日デモと同様の破壊行為が起これば、逆に国際的イメージを損なう。「当局が弱腰だから外国にいじめられる」(デモ参加者)と、指導部批判が出始め ていることへも危機感を強めている。
ネット上ではデモの呼び掛けやデモの報道が全面封鎖され、閲覧できなくなった。学生らは五月一日に全国規模の抗議デモを計画しているが、当局は中止を勧告したもようだ。
共産党機関紙、人民日報は二十一日の論評で「愛国の激情も必要だが、大国の理性も必要だ」と指摘。北京日報は「五輪を成功させて平和を愛する中国 人のイメージを世界に示そう」と主張し、中国青年報は「学習や仕事に励み、合法的、理性的に愛国心を表現しよう」と呼び掛けた。
仏大統領から聖火の『天使』へ
【上海=小坂井文彦】国営新華社通信によると、フランスのポンスレ上院議長は二十一日、上海を訪れ、パリで北京五輪聖火リレーのランナーを務めた 車いすの金晶さん(27)にサルコジ大統領の手紙を渡した。金さんは聖火を妨害から守った「天使」として、中国で一躍ヒロインとなった。中国各地で反仏デ モが続く中、金さんへの手紙がデモ沈静化に有効との思惑が垣間見える。
サルコジ大統領は手紙で、パリでの妨害行為について遺憾の意を表明。「聖火を守ったあなたの勇気は中国の栄誉を示した」と称賛し、「耐え難い妨害に対して最大級の非難をする」と強調した。
さらに「この出来事は、全フランス市民の中国の人々に対する感情を反映したものでは決してありません」と結んだ。
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