サティヤム・コンピュータ・サービスも、中国進出に注力するインドの大手ベンダーの1社だ。中国進出の狙いは、前回に紹介したインフォシス・テクノロジーズと同様に2つある。1つは中国の国内市場の拡大を見越した戦略。もう1つは、日本や韓国、香港、台湾といった非英語圏の国のオフショア・センターとしての位置付けである。
サティヤムの中国法人、サティヤム・コンピュータ・サービス(上海)のラガヴァンドラ・ティレパティ ヘッドは、「インドだけでは、世界でのビジネス拡大に人材供給が追いつかない」と危機感をあらわにする(写真1)。「中国はインドよりも優秀な技術者を雇用しやすい。日本や韓国に近く時差も少ない」と、中国進出の価値を強調する。
サティヤムが中国に抱える技術者は現時点で600人。上海が最大で400人弱を擁しており、北京や大連、広州などにも拠点を構える。
だが、現時点で、最も注力しているのは南京の開拓である。「上海に近く大学も多い。人件費も大都市より安い」という南京の特徴に着目。現地の大学と協業して、優秀な人材を採用するプログラムを用意すると同時に、2500人を収容可能な教育研修施設を設立中だ。
南京で若手を採用し、一人前に育てて、上海などの大都市や日本などの海外で活躍させるのがサティヤム流の中国人活用戦略である。ラガヴァンドラ・ティレ パティ氏は、「中国人はインド人よりも勤務態度は真面目。柔軟性に欠けるところはあるが、1人ひとりの潜在力は高い」とみる。インフォシスと同じく、イン ドなどの海外拠点から赴任した幹部が教育係として技術者の育成に従事する(写真2)。
米国団体が主催する企業の人材教育表彰で1位を獲得
インドのハイデラバードにあるサティヤム本社でインタビューに応じた教育部門トップを務めるエドワード・コーヘン シニア・バイス・プレジデントは「当社が開発した育成カリキュラムに従って技術者を教育すれば、一人前の技術者を効率的に育てられる」と自信を見せる(写真3)。
サティヤムの教育カリキュラムは、人材開発に関する世界最大級の非営利団体「ASTD(American Society for Training And Development=米国人材開発機構)」が優れた研修を施す企業を選定する「2007 BEST Award」で、1位に選出された実績を持つ。
サティヤムに限らず、優秀な人材を世界中から最適なコストで調達し、1人前の技術者に仕立てる「技術者工場」を目指すインド・ベンダーの中国進出には、ますます拍車がかかりそうだ。
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