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熊本県植木町で農業を営む夫婦が殺され、自殺したとみられる中国人研修生の遺体も現場で同時に見つかった。
研修生は今年7月下旬から、ここに住み込みで農業研修を受けていたという。
なぜ、悲惨な事件は起きたのか。避けることはできなかったのだろうか。
外国人の研修・技能実習制度ができて20年近くになるが、トラブルは絶えず、むしろ深刻化しているようにも見える。
何のためにできた制度か。外国人の不法就労を取り締まる代わりに、1990年の出入国管理法改正で外国人の在留資格として「研修」が設けられた。
技術移転による国際貢献がうたい文句だった。大企業だけでなく、中小企業なども研修生を受け入れられるように翌91年、当時の労働、通商産業、外務、法務4省で財団法人国際研修協力機構を設立して、支援や指導を行うことになった。
だが、研修とは名ばかりで、実際には低賃金・長時間労働の偽装研修がある、研修中にけがをしても補償制度がないなど、当時から問題点が指摘されていた。
しかし、制度は拡充されていった。1年間の研修に2年間の技能実習期間が加えられた。対象職種も拡大された。その結果、研修生などは増加していった。
2008年末現在で、研修生は約8万7千人、技能実習生が約10万5千人を数える。ここ10年間で研修生は3倍以上に、技能実習生は約7倍になった。その多くが中国からである。
研修生や技能実習生が増えればトラブルが増えることも予想はできる。日本語がある程度できて、生活習慣の違いなどを理解していれば摩擦も起きにくい。
だが、現実には、そこらがあいまいなまま来日する研修生もいるだろう。
受け入れ側にも問題がある。パスポートを取り上げる、時間外労働しても残業代を払わないなど、法務省入国管理局から法律違反や人権侵害などの不正行為を指摘された件数は増加を続けてきた。
研修生や技能実習生の失(しっ)踪(そう)も多い。07年度は失踪者が2千人を超え、08年度も1600人以上が姿を消したという。
技術移転、人材育成で国際貢献は建前でしかない。研修生は出稼ぎ感覚で、受け入れ側は労働力として期待する。
このため、研修期間を極力減らし、基本的に労働関係法令が適用できるようにするなど、管理を強化する方向で制度の修正が続けられてきた。
過疎地ほど若い労働力の確保が難しい現実がある。研修生がいないと事業継続できない企業もあるのではないか。九州の農業現場でも多くの研修・技能実習生が働いている。あまり知られていない、その実態を明らかにする必要がある。そのうえで制度のあり方を論じてもいい。
この制度には地方自治体を含め多くの役所がかかわっている。連携強化が課題だが、半ば人任せにしている役所もあるのではないか。それも問題である。
=2009/11/15付 西日本新聞朝刊=
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2009-11-16
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