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2000年前後に広がった「氷河期」が再びやって来るのか。来春卒業する高校、大学生らの就職内定率が大幅に落ち込んでいる。
不況で企業が採用を極力抑える中、学校や労働局は求人開拓に懸命だ。経済、社会の各分野で新たな人材を生かすのは国づくりの土台。関係者が危機感を共有し、対策を急ぐべきである。
高卒予定者では広島県教委がまとめた内定率が10月末で、57・3%と昨年同期より11・5ポイントも下がった。中国地方の他県でもほぼ同じで、過去最悪の状態という。
就職活動を年々前倒ししている大学などでも、事情はほとんど変わらない。広島労働局が集計した県内の内定率は48・8%で、やはり7・8ポイントもダウンした。就職先が決まらないまま多くの生徒、学生を送り出す―。そんな卒業シーズンは迎えたくない。
各県とも企業側と生徒たちとの合同面接会の開催場所を増やしたり、経済団体に重ねて協力を要請したりするなど支援活動を強めてきた。中国5県の労働局は今月から、高校生向けの求人情報をまとめた共通の冊子を発行している。例年にない取り組みが効果を発揮するのを期待したい。
ただ面接会への参加企業数は各地とも激減。反応は厳しい。高卒採用の場合、例年9月16日が解禁日で、昨年はまだ求人計画に大きな変更がなかった。リーマン・ショック以後の不況が雇用方針に反映するのは今年が初めてという企業側の事情も理解できる。
それでも景気の底打ち感が出て、業績の改善に向かう大手、中堅企業もある。学校などの要請に応じ、業務の将来性や地域への貢献も勘案して、採用計画を上方修正できないだろうか。
一方で、地味でも安定経営を続ける中小企業は少なくない。わずかな求人数でも、学校が意欲のある生徒を進んで紹介するなど熱意を伝えたい。生徒自身や保護者も企業規模や知名度にとらわれず、視野を広げてほしい。親元から通いたい気持ちは分かるが、求人数が多い大都市での就職も選択肢に入るだろう。
人手不足が続く介護、福祉分野を含めミスマッチを解消する必要もある。それには在学中のインターンシップや事前の職場見学を充実させ、仕事に対する生徒の理解を深めることが欠かせない。
もちろん、就活の規制がない大学生の場合は学業がおろそかにならないよう配慮する必要がある。
それでも個別の努力には限界があろう。新政権の緊急雇用対策は重点方針に「貧困・困窮者、新卒者への支援を最優先する」と掲げる。情報通信や農林などの内需分野で、企業だけでなくNPO法人を含め「新たな雇用を創造する」のも同じく柱のひとつとしている。新卒者向けに具体化させ早く実施するべきではないか。
卒業時に不安定な雇用しか残されていないような事態が広がることは食い止めなければならない。夢を抱く若者を実社会で受け止めるのはおとなの責任である。
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