2009-11-26

外食産業、中国に活路 13億の胃袋狙い積極出店

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 中国で店舗網を広げる日本の外食チェーンが増えている。日本市場は少子化などの影響で頭打ちのため、13億の人口を抱えて成長著しい中国に活路を見いだそうと懸命だ。ただ、中国の消費者の心をつかむのはそう簡単ではない。

 日本でファミリーレストラン「デニーズ」を展開するセブン&アイ・フードシステムズ(本社・東京)は7月下旬、北京市中心部のオフィス街に中国1号店を開いた。店名は「オールデイズ(中国名・奥楽多)」だが、店の雰囲気はデニーズそっくりだ。

 ハンバーグ、スパゲティなどが中心のメニューは、和食がない点を除けばよく似ている。味もほぼ同じ。日替わりランチならライス、スープ付きで28元(約360円)だ。

 24時間営業でホットコーヒーはお代わり自由。無線インターネットもあって長居も歓迎する。現地合弁会社の久藤祐一郎社長は「日常的に使ってもらえる『ファミレス』を定着させたい」。

 朝、昼は約5割、夜も約14%の人がほぼ毎日外食しており、日本での調査結果の約3倍――。久藤社長らは07、08年に北京や四川省成都市のイトーヨーカ堂への来店客らにアンケートし、中国人の外食の多さに目を見張った。

 生活水準の向上に伴って洋食化も進み、「世帯月収6千元(約7万8千円)程度の世帯を狙えばチャンス」と判断。今後3~4年で北京を中心に約30店に増やす計画だ。

■価格に敏感 半額で行列

 10月末の平日の昼過ぎ。上海市のオフィス街にあるイタリア料理チェーン、サイゼリヤ(埼玉県吉川市)の300席は、ほぼ埋まっていた。20~30代の会社員が多いが、お年寄りや学生も目立つ。 単品パスタは9元(約120円)から。「別の店のめん類とほぼ同じ値段なので気軽に入れる」(40歳の女性会社員)。広州、北京にも展開しており、12月中旬には南京に進出。50店目になる。

 「日本企業というのは表に出さず、何より『安さ』を重視した」と上海サイゼリヤの田井野俊樹社長。狙いは世帯月収5千元(約6万5千円)以下の「中間層か、それより下の層」だ。

 中国進出は03年12月。当初、中国市場で先行する米大手ピザハットより3割安い価格に設定した。が、客は来ない。半年後、18元(約230円)のパスタを12元(約160円)に下げた。客は5割増えたが、家賃がまかなえない。累積損失は一時、2億円に達した。

 04年8月、ピザとパスタを開業時の半額にした。すると「広告も出していないのに2日目には行列が出来た」(田井野社長)。週末を中心に客が押し寄せ、08年度は1億円近い税引き前利益が出た。

 中国に再挑戦するチェーンもある。ミスタードーナツのダスキン(大阪府吹田市)は00年に上海へ進出。めん類1杯の価格でドーナツを出したが、「嗜好(しこう)品に高いお金を払う食習慣がまだなかった」(ミスタードーナツ上海の和田哲也社長)ため、12店から2店まで縮小を迫られた。

 だが今春、台湾の統一グループと合弁会社を設立して店を増やしたところ、好調だ。所得水準の高まりが背景にあるようで、13年までに66店に増やす計画だ。

■縮小する国内市場

 外食大手が中国に走るのは、日本では少子化に加え、節約志向で外食を控える傾向が続き、市場が縮小気味だからだ。ファミレスの既存店売上高は08年まで12年連続で前年割れ。業界団体がまとめた9月の全店売上高は、ファミレスが前年同月比5・4%減、パブレストラン・居酒屋が同7%減だった。「日本市場が飽和するなか、頼みは海外しかない」(ミスタードーナツ上海の和田社長)のが実情だ。

 ただ、中国人の志向をとらえきれずに撤退を迫られた日系チェーンは多い。「地場飲食店があふれる中国で、知名度の低い海外店が食い込むのは至難の業だ」(上海の日系大手飲料メーカー)。

 220元(約2900円)で食べ放題の富裕層向けレストランを開いた柿安本店(三重県桑名市)は07年、開店から1年弱で4億円の特別損失を出して撤退した。柿安は「日本で成功した高級野菜メニューを充実させたが、野菜が安い中国では受け入れられなかった」と振り返る。

 パスタレストランのピエトロ(福岡市)、ファミレスのジョイフル(大分市)も良い立地が確保できないなど苦戦し、撤退に追い込まれた。(奥寺淳=上海、琴寄辰男=北京、伊藤裕香子)

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●中国に進出した主な外食チェーンの店名(右は中国名)

【日系】

サイゼリヤ=薩莉亜

オールデイズ(デニーズ)=奥楽多

ミスタードーナツ=美仕唐納滋

カレーハウスCoCo壱番屋=同

吉野家=同

和民=同

【米国系】

マクドナルド=麦当労

ケンタッキーフライドチキン=肯徳基

スターバックスコーヒー=星巴克珈琲

ピザハット=必勝客

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●中国の外食市場 中国商務省によると、08年の飲食業の売上高は1兆5404億元(08年平均レートで約22兆8千億円)。日本の市場規模(08年に約24兆4千億円)をまもなく追い抜く見通しだ。同省は13年に3兆3千億元(約43兆円)まで売上高を伸ばす目標を掲げる。

 日本からの進出も90年代以降増えている。全体像は明確ではないが、「日本食レストラン海外普及推進機構」が最近、日本の外食産業約110社を調べたところ、そのうち15社が中国に出ているなどのデータがある。

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