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□「子育てに優しい社会の実現を目指して~働き方の改革に向けた企業の挑戦」
□企業と行政の積極的な連携でワークライフバランスの実現へ
経済の成長や社会基盤の維持にかかわる少子高齢化の進展。社会全体で子育てを支えるには、どのような制度や環境づくりが必要なのか-。日本経団連は「子育てに優しい社会の実現を目指して-働き方の改革に向けた企業の挑戦」と題するシンポジウム(後援・経済広報センター)を開催、企業の先進的な取り組みを提示すると同時に、ワークライフバランスの実現に向け企業と自治体、NPOの連携のあり方などについて意見交換した。
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≪基調講演≫
■少子化社会における企業の社会的責任
□前田新造 日本経団連少子化対策委員会共同委員長(資生堂社長)
日本は2005年から人口減少局面に入り、少子高齢化が進んでいる。55年には総人口が8000万人台になり、生産年齢人口も半減すると予想されている。人口減少と高齢化の同時進行は、経済成長の抑制や停滞、財政・社会保障制度持続への懸念、医療や介護など社会システムの維持が困難になるという深刻な影響をもたらす。
こうした認識から、経団連では少子化対策の総合的な推進に向けて提言を行ってきた。ポイントは5つ。第1に政策目標の設定とPDCAサイクルの確立。具体的には国民の結婚・出産にかかわる希望が実現した場合の合計特殊出生率1.75を目安とする。第2に待機児童の早期解消、第3に積極的な財政の投入、第4は企業によるワークライフバランス施策の積極推進、第5は子育てを見守り支える風土の醸成だ。
企業の具体的な取り組みとして、当社を例に取ると、最初に着手したのが仕事と育児の両立支援。その1つとして03年に本社に事業所内保育所「カンガルーム」を開設した。また、店頭で勤務する美容職社員が育児時間制度を取得しやすいよう、混雑する夕方時刻を担当する代替要員システムである「カンガルースタッフ」を創設した。
こうした施設・制度によって出産・育児を理由にした退職はほとんどなくなり、社員が相互に支えあう土壌が生まれている。企業が社会的責任として努力を続けることが、女性社員のみならず、男性社員も含めた職業人全体のワークライフバランスの実現につながると考えている。
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【プロフィル】前田新造
まえだ・しんぞう 70年慶大卒。資生堂入社。アジアパシフィック地域本部長、取締役経営企画室長などを経て05年から現職。
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■政府における少子化対策の現状と課題
□伊岐典子 厚生労働省雇用均等・児童家庭局長
91年に育児休業法が成立し、合計特殊出生率は2005年の1.26から1.37へと改善したものの、依然、深刻な状況にある。
鳩山新政権の子育て支援の目玉である「子ども手当て」については、2010年度概算要求で1人当たり月額1万3000円として2兆3345億円を計上したところだ。こうした現金給付のほか、サービスの提供や仕事と生活の調和に関する制度の設計も必要だ。働き方の改革による仕事と生活の調和の実現、親の就労と子どもの育成の両立を図るための社会的基盤の構築。この2つが車の両輪として欠かせない。
企業とかかわりのある施策としては、05年の「次世代育成支援対策推進法」がある。同法で一般事業主に行動計画の策定をお願いしたところ、大企業の98.2%から提出をいただいた。08年12月の同法改正では、行動計画作成の義務化対象を従業員301人以上の企業から従業員101人以上の企業へと広げることができた。現在は準備期間中で、施行は11年4月からとなる。
少子化にかかわる今後の課題は4つ。まず、子ども手当にかかる制度設計の問題だ。財源や所得制限なども議論の上、提示する必要がある。2つ目は待機児童解消に向けた保育サービスの量的質的充実。3つ目は10年度以降の対策の基本方針となる新たな少子化対策大綱「子ども・子育てビジョン」(仮称)の策定だ。そして4つ目は子育てサービスについての抜本的な見直し検討。これら課題に向けて今後も力の限り取り組んでいきたい。
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【プロフィル】伊岐典子
いき・のりこ 79年東大卒。労働省(当時)に入省。山梨県商工労働部職業安定課長、大阪婦人少年室長、厚生労働省職業安定局業務指導課長、中央労働委員会事務局次長、大臣官房審議官などを経て現職。
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