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システムの開発コストを抑えるため,中国やベトナムなどの海外企業に開発をアウトソーシングするオフショア開発が増えている。だが,言語や仕事の進め方,生活習慣の違いなど,オフショア開発を進めるうえでの障害は少なくない。ブリッジSEの仕事とは,海外企業の開発者とコミュニケーションを取りながら,システム開発を円滑に進める“橋渡し役”を務めることである。
チェンジビジョンの周翼氏は,システム設計支援ソフト「JUDE」の開発部隊において,委託先の上海企業との連携で腕をふるっているブリッジSEだ。プログラマとしてのキャリアもあり,中国語と日本語に精通した周氏が加わったことで,日中双方にある開発現場のコミュニケーションは格段に良くなったという。
ただし,当初から何もかもスムーズに行ったわけではない。「日本からの要求仕様を伝える手段は主にチャットとメール。タスクを中国のチームリーダーに伝え,『分かりました』と返信が来たので安心していたところ,数日後に予想とは全然違うものが送られてきたこともあります」と周氏は振り返る。その反省から,周氏は毎日の朝会で,中国の開発チーム全員のタスク状況を説明するようにしている。また,タスクの進ちょく状況と優先順位をWikiを使って日中で共有している。
「仕事の成果」に対する日中の認識の違いにも直面した。「中国の開発者は多少納期が遅れても,独自の発想と創造性を盛り込んだオーバースペックな製品を開発すれば評価されると思っています。これに対し日本では,独創性よりも,とにかく納期を守ること,要求した仕様をきちんと作り込むことを優先します」と,周氏は両者の違いを説明する。
“信頼関係”を築くことが何より大切
オフショア開発を成功に導くポイントは何か。「開発元と委託先の両者の間に信頼関係を築くことが何より大切」と,周氏は明言する。同氏は,毎年1 回,帰省もかねて上海の委託先の会社を訪れ,仕事の進め方について議論することにしている。逆に,委託会社の若い技術者を日本に受け入れることもやっている。
「オフショアだからこそ,Face to Faceのコミュニケーションが不可欠」というのが周氏の持論。中国の若い技術者が来日すると,就業後に開発現場の仲間とスポーツに誘うなど,プライベートに入り込んだ付き合いをしている。
かつてタスクが厳しくなった時も,互いに,遠く離れた開発現場にいる仲間の顔を思い浮かべながら乗り切ってきた。ある日周氏は中国の技術者からこう言われたという。「JUDEのプロジェクトは自分にとってとても大切。なくなったら泣きますよ」。これを聞いた時,周氏はブリッジSEとしてのやりがいを感じたという。
「今後,グローバルソーシングが進めば,世界のリソースを集めた国際チームを組んで,コスト・技術・開発期間の最適化が求められるようになります。各国の強み,弱みを理解し,最高の選択肢を提案できるブリッジSEを目指します」と,周氏は胸を膨らませる。
お仕事解説:ブリッジSE
開発元の要求を正確に伝える
海外企業に開発を委託する場合に,現地の開発者とコミュニケーションを取りながら,プロジェクトを円滑に進める“橋渡し役”。ブリッジSEの仕事は,「開発元の要求を委託先に正確に伝える」,「委託先の開発の進ちょくを管理する」に大別される。海外と日本では言語や仕事の進め方,生活習慣などが異なるため,開発が進むにつれて様々な問題が表面化してくる。ブリッジSEには,こうした諸問題を解決する能力が求められる。
必要なスキル
* 専門分野の技術力と語学力
開発元の要求を理解し,委託先にそれを正確に伝えるには,技術的なスキルと語学スキルの両方が必要。
* 異文化への柔軟性
母国以外の国の文化や人と積極的に交わり,理解を深めようとする意欲と行動力が求められる。
* 問題を調整する能力
商習慣や仕事の進め方,文化的な背景の違いによる両者の主張のズレを吸収し,建設的な解決策を示すことが必要。
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2009-09-29
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