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■汚染続発「1兆ドル市場」に照準
日中の大学による中国の環境保全研究への支援を日本の大手商社が相次いでスタートさせた。基礎的な研究や人材育成などに貢献することで、数年内に市場規模が最大で1兆ドル(約90兆円)に達するとみられる巨大な中国の環境ビジネスへの関与を深めることが狙いだ。世界の工場から世界の市場へと猛スピードで姿を変えている中国で、環境技術でなお優位性を保つ日本企業のプレゼンス(存在感)をいかに高めるか。先兵としての役割を自らに課している。
◆CSRの一環として
アオコの大量発生など水質汚染が指摘される江蘇省の太湖流域で、水環境保全に関する研究を九州大学と上海市内の上海交通大学、同済大学の3大学が共同プロジェクトとして進める。そこに資金支援するのが三菱商事。支援規模は明らかにしていないが、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として2014年まで5年間、支援を続ける。九大では創立100周年記念事業の「東アジア環境問題プロジェクト」と位置づけた。
今月16日に上海市内で関係者による覚書の調印式が行われた。発表によると、3大学は太湖の湖底に高濃度の酸素を送り込むことで水質を浄化する方法を実証し研究するほか、生態系の変化なども調査する。研究成果を太湖流域の江蘇、浙江、上海の2省1市に提言する。学生の交換留学も行って人材を育成する。
伊藤忠商事の中国法人、上海伊藤忠商事は、上海市内の華東師範大学で、環境保全研究を支援する奨励金制度を今年1月に創設した。伊藤忠グループでは今年から中国で華北、華東、華南の3地域ごとにCSR活動を強化する方針を決め、中でも環境保全を最優先のテーマにしている。
華東師範大に設立した「伊藤忠環境保護科学研究賞」の奨励金は合計10万元(約130万円)。学部を問わず、水処理など環境保全につながる研究プロジェクトを学生や教員らから公募して奨励金を贈った。
上海伊藤忠の佐々木淳一総経理(社長)は「中国および上海の持続可能な社会の実現に貢献したい」と制度創設の趣旨を説明している。かつて公害問題で苦しんだ日本の経験から、中長期的な環境問題の解決こそが、中国の高度経済成長の安定化を支えるとの認識を強くにじませた。
◆「13年にGDP15%」
地道なCSR活動ながらも中国の環境問題に深くかかわろうとする姿勢は、ビジネスの将来性に対する嗅覚(きゅうかく)の鋭さが売りの大手商社ならではのこと。日本の経験に比べても中国の環境問題は、国土の広さや人口の多さからみてけたはずれに深刻で、その解決には膨大なコストがかかる。
米会計事務所大手のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)が今月まとめたA4版にして164ページもの調査報告書「ザ・チャイナ・グリーンテック・リポート」によると、中国の環境ビジネス市場規模は数年内に最低でも5000億ドル、最大では1兆ドルに達する可能性がある。
中国政府が環境汚染への規制を一段と強化するとの見通しから、過去の汚染除去や今後の汚染物質の排出防止装置などハード面、汚染防止のシステムなノウハウなどソフト面で急ピッチに需要が伸びるとみている。13年に中国の国内総生産(GDP)の15%までが環境ビジネスで占められるとの試算もまとめている。
温家宝首相は今月9日、日中経済協会訪中代表団との北京での会談で、同代表団最高顧問、御手洗冨士夫・日本経団連会長(キヤノン会長)に対し、「グリーン(環境)経済を両国発展の力点とすることに賛同する」と述べた。
環境技術を前面に中国市場で日本経済の中長期的な「V字回復」をめざすシナリオを商社は描いているに違いない。(上海 河崎真澄)
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2009-09-28
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