2009-09-09

国有が民間を買収 中国企業の実態如実に、鉄鋼大再編

:::引用:::
  山東鋼鉄集団有限公司と日照鋼鉄控股集団有限公司の合併が決まった。民間の日照が国有の山東に吸収される形。今回の再編で、生産量で中国第3位、売上で第2位という、鉄鋼最大手で中国を代表する上海宝鋼に次ぐ巨大鉄鋼企業が誕生する。

  今回の再編が業界に与える影響は極めて大きいが、問題は、中国が国策として育んできた民間経済が、やはり国有には勝てない、最後には国有の肥やしになってしまう、という今回の結末。中国ではちょうどトップ500企業が発表され、企業問題がクローズアップされているが、トップ500のうち300社以上が国有企業であり、国有の強さ、民間の弱さが改めて示されていたところだった。

  鉄鋼業界そのものの要請もある。鉄鋼というのは通常、設備投資の大きさなどから、寡占になりやすい業界だが、中国では事情が違う。業界トップ10(宝鋼や今回の山東含めて)の生産量はわずかに全体の42.5%。地方政府が後押しする地方企業が乱立しているのが現状だ。世界に通用する競争力を備えるためにも、業界の集中化、つまり企業の吸収合併、閉鎖などを通じた大再編は必須だった。日照にもほかに生き残る方法があったものの、結局国有の山東鋼鉄に吸収合併されたのは、業界の思惑、その上の政府の意向が働いたからとされている。

  山東鋼鉄そのものも山東省地場の鉄鋼企業2社が合併して設立した経緯がある。今回の合併も山東省主導による業界再編と見るのが一般的だ。そのため、「今回の件を単純に国有企業による民間企業の買収と位置づけることはできない」との指摘もあるが、それであればなおさら、民間経済育成が政府にとってポーズに過ぎなかったと指摘されてもやむを得ざることとなる。

  ただし、中国経済が政府主導・国有中心、その上の党の意向が働いた結果として急成長を遂げていることは否定できない事実だ。「国」、あるいは「党」がうまく回転しているときはよいが、「市場経済」の原則からは遠のく。そもそも中国が標榜するのは「社会主義市場経済」だから、原則論を振りかざしてもしょうがないが、民間を育成できなければ経済の多様化、競争原理、国際競争力、企業の効率化、いずれもおぼつかない。

  中国経済・中国企業(特に国有企業)は「大」きいが(売上も人員も、あるいは現時点においては利益も)、「強」くない(効率、競争力、技術力)と揶揄されているのが現状。中国国有資産監督管理委員会(国資委)という省庁の大臣が、「(今回発表されたのは)500大であり、500強ではない(中国語でトップ500という場合、通常『500強』という言葉を用いる)」と皮肉る始末だ。

  それを十分理解した上で進めていたはずの民間経済の育成という視点においては、今回の吸収合併は一つの挫折を示すものといえるかもしれない。(編集担当:鈴木義純)
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