008年、携帯電話を取り巻く市場環境は大きく変 化し、新たなビジネスモデルを模索する動きが顕著な1年となった。こうした中iモードサービスは、どんな施策で市場の活性化を目指したのか。コンテンツ担 当部長を務める原田氏が、キャリアとコンテンツプロバイダの取り組みについて説明した。
携帯向け検索の普及で一般サイトの人気が高まっているが、キャリアが提供する公式コンテンツも、課金面や品質面の安心感から堅調な伸びを示している。
中でも5割超の市場シェアを持つドコモのiモードは、コンテンツ情報料の売り上げが1カ月で210億円に達するなど(2008年9月時点)、好調に推移。パケット定額制の普及も手伝って利用は増加しているという。
しかしコンテンツビジネスは、トレンドの移り変わりが激しく、それを読み誤ると瞬く間に会員離れが進むという厳しい世界でもある。そのため、キャリアやコンテンツプロバイダは、常に利用者の動向や市場のトレンドを注視し、それに合わせたサイトを構築する必要がある。
2008年は携帯電話を取り巻く市場環境が大きく変わり、コンテンツのトレンドや配信方法、サイトのUIにもさまざまな変化が見られた。こうした中、通信キャリアやコンテンツプロバイダは、どのような施策でユーザーの獲得を目指したのか。
mobidec 2008に登壇したNTTドコモ コンシューマサービス部コンテンツ担当部長の原田由佳氏が、iモードサービスの活性化に向けたドコモの施策と、ユニークな取り組みで会員数を伸ばしたコンテンツプロバイダの事例を紹介した。
iモードメニューを刷新、“試せる”仕組みを導入
従来はメニューリストからのアクセスが大半だったiモードサイトだが、検索サービスの普及で、アクセスの導線が変わってきている。また、ジャンル やカテゴリーが増加し、1ページあたりの情報量も増えるなど、これまでのサイト構成では使いづらくなったことから、ドコモはiモードサイトの刷新を図っ た。
1つは、メニューリストのリニューアルだ。ジャンル分けを細分化するとともに、ダイヤルキーを押せば各カテゴリーにアクセスできるようにするなど、必要なサービスにたどりつきやすいUIに変更したという。
また、検索サービスの導入以来、検索語として企業名やサービス名を使うユーザーが増えたことから、4月に新カテゴリーとして「企業・ブランド」を 新設。20ジャンルに97社がメニューを提供しており、開始から半年でユニークユーザーが約4倍になるなど、順調にアクセスを伸ばしているという。
コンテンツ利用の活性化を図る施策としては2月から、有料サイトを一定期間無料で試せる「お試しマイメニュー」を用意。無料期間中に解約すれば情報料が発生しないことから、便利ツールやエンタテインメント系サイトなどでの効果が高いと原田氏は説明する。
2008年冬モデルからiアプリの仕様が変わったのに伴い、iアプリから直接、マイメニューに登録できる仕組みも用意した。この機能を利用すれ ば、いったんiアプリを終了してiモードサイトにアクセスするという面倒な操作が不要になり、例えば「配信したiアプリの体験版からも、すぐに有料サービ スに登録できる」(原田氏)など、利便性が高まるという。
さらに12月からは、動画や音声の番組をプッシュ配信するMusic & Videoチャネルに改善を加え、1チャネルに最大7番組を登録できるようにする。Music & Videoチャネルは1つの端末で2チャンネルを利用できるので、最大14番組の予約を設定可能になる。
原田氏は今後も、ポータルをよりよくする必要があるとし、UIの工夫やレコメンドの強化で利便性の高いサイト作りを目指す考えだ。
2008年、ゲームコンテンツのトレンドは
原田氏はキャリアの取り組みに続いて、ゲーム分野で多くの会員を集めたいくつかの事例を紹介した。
1つは、名作や大作として知られるゲームの携帯オリジナル版を開発した事例だ。スクウェア・エニックスのファイナルファンタジー モバイルや、バンダイネットワークスの「iワンピース」は、こうしたアプローチで会員を増やしたといい、原田氏は「1つの有効なアプローチ」だという。
2つ目は「この1年で市場を作った」(原田氏)というアイテム課金。事例として紹介されたドワンゴの「悠久の騎士団ONLINE」は、無料で遊べるロールプレイングゲームで、必要であれば武器や防具、コスチュームなどのアイテムを購入する仕組みだ。
3つめはアーケードゲームとの連携で、これまでは成績の記録や待受画像の入手程度の連携だったものが、アーケードゲームと同じデータでケータイでも遊べるようなサイトも登場しているという。
原田氏が「既存の発想にとらわれないゲーム」の事例として挙げたのが、GPSとの連携を生かした「ケータイ国盗り合戦」。異動先の位置情報を記録 して“国盗り”を目指すゲームで、「35歳を中心とした利用者が7~8割」(原田氏)という新たなユーザー層を開拓した点や、ユーザーを“どこかに行かせ る”動機を作れる点がユニークだ。
今後はリアルとの連携がカギに
携帯電話が多種多様な事業との連携を深める中、コンテンツビジネスにも同じような傾向が見え始めている。
ここで原田氏が挙げたのは、ニッセンが「顔ちぇき!」とのタイアップ企画として展開した香水販売の事例だ。利用者が顔写真をメールで送ると、顔の イメージに合った香水をレコメンドするというサービスで、2週間で約80万アクセスを稼ぎ、販売数はキャンペーン前の3.4倍の伸びを記録したという。
ほかにも、テレビドラマに登場するアイテムをケータイで購入するサービスが人気を博すなど、リアル連携がiモードの活性化につながると原田氏は期待を寄せる。
ドコモは冬モデル向けに、新サービスのiコンシェルやiウィジェットを 導入しており、このサービスを通じてリアル連携の強化を目指している。例えばワーナーマイカルのiコンシェルサービスは、端末のスケジュールに映画の上映 予定が自動で配信され、見たい映画のチケットは携帯経由で購入できるなど、より実生活に役立つ連携が可能になった。今後はGPSとの連動で、近くの映画館 の上映予定や空席状況などをレコメンドするようなサービスを目指すという。
原田氏は、ドコモがユーザーとの直接の接点として持つ実店舗がドコモショップのみであることから、リアル連携の強化には、コンテンツプロバイダやリアル店舗などの協力が不可欠だと話し、幅広い企業の参加を呼びかけた。
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