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このところ、中国株が金融引き締め懸念から大幅に調整し、米国株も消費の先行き懸念から上値が重くなっている。日本株もそれらが波及する形で調整を余儀なくされている。この先をどうみるか――。
結論から言えば、一時的な株価調整の可能性が高く、調整一巡後は再び上昇に向かうと判断している。理由は以下の5つである。
第一に、中国の金融引き締め策についてはインフレ懸念が台頭しているわけではなく、不動産価格の上昇もバブル的な勢いをみせているわけでもない。2009 年前半の金融緩和策の行き過ぎを修正する範囲にとどまろう。すなわち、すでに実施されている銀行融資の増加率の抑制や住宅購入時の頭金比率の引き上げなどにとどめ、金利の引き上げなど本格的な引き締め策を直ちに採る可能性は小さいとみている。
景気はすでにV字回復の様相をみせており、企業業績も今後本格的に回復しよう。つれて、中国株も金融相場から業績相場に移行し、再び上昇する可能性が高い。中国株の予想PER(株価収益率)だが、直近の株価下落で1年後の予想1株利益(EPS)基準で20倍程度まで下がっており、かなり割高感が是正された。
第二に、米国消費の先行き懸念だが、米国家計の貯蓄率の上昇が一巡し、本格的な消費拡大局面がやってくるのは10年以降とみられる。09年下期も住宅価格に安定化の動きが出てきたことなどが下支えし、過度に心配することはなさそうだ。住宅投資は回復に転じ、大幅減産により在庫も大きく減少しており、この先在庫投資の増加も予想される。09年下期の米国景気は従来予想より上振れる可能性があるとみている。
第三に、企業収益の回復が予想以上であることだ。09 年4~6月決算は米国に続き日本においても、コスト削減効果が大きく、期待値を上回った。4~6月決算を踏まえたNOMURA400株価指数採用の製造業セクターの今期予想経常利益(3カ月前比)のリビジョンインデックス(算式は(上方修正銘柄数-下方修正銘柄数)÷全銘柄数×100)は7月以降急上昇し、7~9月の同数値は8月中旬時点で過去10年間での最高水準である42に達している。
株価を占う上では、10~12月のリビジョンインデックスもプラスを継続できるかどうかが大事だが、3つの根拠から可能性は高い。(1)自動車、液晶テレビ、鉄鋼生産など、日中米の各国政府によるスクラップインセンティブやエコポイントなどの需要刺激策および新興国の景気回復などにより、10~12月にかけて期待以上の増産が見込まれる。(2)多くの輸出企業が4~6月決算を機に、1ドル=95円から90円台前半に為替の前提レートを変更し、為替面でのリスクが小さくなった。(3)会社、アナリストともにまだマクロ環境の好転を織り込まず、コスト削減重視の手堅い利益予想をしている。
第四に、バリュエーション面でも評価の余地があろう。予想PERは株価の上昇とともに上がってきているが、10年度東証株価指数(TOPIX)換算予想EPSも上方修正されてきており、50~55程度(09年度予想は25)まで上振れする可能性がある。8月18日時点のTOPIX(約950ポイント)をベースとすると、予想PERは17~19倍と計算される。
第五に、日米とも金融政策の変更は視野に入っていない。景気は日米とも回復過程に入ってきたが、需給ギャップはまだ大きく、インフレ懸念が台頭する状況ではない。出口戦略は議論され始めても、実際に利上げが開始されるのは、米国で10年後半、日本で11年だろう。まだ、利上げ懸念が現実化するタイミングではない。
このように、景気、企業収益、バリュエーション、金利環境と点検すると、今回の調整は一時的で、年末までにあと10%程度の株価上昇余地があるようにみえる。米国景気が予想より強く、生産が拡大傾向にあり、為替の円高も大きなリスクにならない中では、鉄鋼などの素材株のみならず自動車、電機などの輸出株にチャンスが大きいだろう。また、金融株も出遅れ修正が期待できるとみている。
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2009-08-20
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