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◇志願者は増加傾向--統廃合進む中、経済的理由増え
衆院選では複数の政党が高校の授業料の実質的な無償化をマニフェスト(政権公約)に盛り込んだ。親の貧困や失業から学ぶことが困難になっている生徒が増えていることへの対応だ。では、実際に働きながら学ぶ定時制や通信制の生徒たちの働く現状や学びの環境はどうなっているのか。
「お金がないと学校に行けないのか。生徒たちの学びたいという願いに応えるためにも学校の現状を広く伝え現実を動かそう」。8月1日、福島市で開かれた日本高等学校教職員組合(日高教)定時、通信部の学習交流集会で同労組の佐古田博副委員長は強い口調で訴えた。集会には定時・通信制の教職員と生徒、父母ら100人以上が参加。生徒たちの労働の現状、定時制のあり方、学校生活の問題点などが報告された。
定時・通信制は、進学を希望する生徒の減少などもあり、行政の効率化などを目的に統廃合が進められている。定時制(公立)は1988年に全国で986校あったが、08年には719校に減少。統廃合の進展で通学時間が長くなるなど、定時制に通う環境は悪化している。ところが最近になって、志願者は逆に増加傾向にある。97年に3万5595人だったのが、08年には4万7254人に増加、08年は、ここ10年で最大の志願者数になった。
増加の背景には、不登校やいったん高校を中退した生徒がやり直しで入学するケースなどが指摘されるが、最近は経済的な理由で定時制を選択する生徒が増えているという。大阪府では今春、府が私立高の助成金を削減し、約半数の私学で授業料の値上げがあり、定時制などの2次募集571人に対し756人が志願する事態になった。集会に参加した関東の教諭は「私は給食で出る2枚のパンは1枚しか食べず、牛乳も飲まない。『朝から何も食べてない』と欲しがる生徒がいるからです」と厳しい生徒たちの生活実態を明かす。
◇安定した仕事なく、賃金不払いの被害も
生徒たちは、仕事でも厳しい現実に直面している。大阪府から参加した教諭は「中卒で働ける場は本当に少ない」と話す。日高教の調査では、生徒の約45%はパート・アルバイトで働き、正社員は3%に過ぎない。仕事をしていない生徒も約30%いた。また、最低賃金以下で働かされたり、賃金の不払いなどの被害に遭うケースも多い。
埼玉県内の定時制に通う2年生の女子生徒は、1日8~9時間カフェのアルバイトで働いたが、850円と言われた時給は見習い扱いだとか口座が分からないなどの理由で支払われなかった。女子生徒は2700円の授業料3カ月分を滞納し、退学を迫られた。祖母が年金から払ってくれ何とか退学は免れた。
「見習い期間だから時給を最低賃金から30円引いたとか、有休を取ったら時給を減額するといった違法行為は数多くある」と、ある教諭は話す。生徒が不利な状況で働くことを阻止しようと、労働契約の確認や不払いの賃金の請求などを学ぶ授業も行われている。
安定した仕事のない状態が学ぶ環境を不安定にしている。それでも女子生徒は「養護学校の教諭になりたい。卒業までに大学の学費をためたい」と語る。ただ奨学金は頼りにしにくい。小泉政権後、奨学金制度の有利子化が進み、大学卒業時で多い人は500万円近い借金を背負う。
関東の教諭は「学費や給食費などで月に1万円近くかかる。働きながら学ぶ場を確保すること、生徒たちが安心して学べる支援は必要だ」と給付制の奨学金の創設や授業料無償化の必要性を訴える。
若年者の雇用、就学権の確保。定時制の抱える問題にどのような回答が示されるのか、選挙の行方が注目される。【東海林智】
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