2007-09-14

業界を挙げ人材確保 産学連携さらに強化 活況の工作機械各社、深い悩み

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業界を挙げ人材確保 産学連携さらに強化 活況の工作機械各社、深い悩み
空前の活況にわく工作機械業界。今年の受注総額が過去最高の1兆5000億円を突破することが確実視され、各社の業績も右肩上がりだ。業容拡大へとドライ ブがかかるが、大きな障害が立ちはだかっている。人材不足だ。受注額が伸びるのとは対照的に、業界の従業員数は年々減り続け、現在は約2万3500人。 ピーク時の1990年に比べ1万人以上も減少している。こうした状況に歯止めをかけようと、業界を挙げた人材確保作戦も展開されている。(西村利也)

 「日本の工作機械業界の生産額は25年間連続で世界一の座にあり、日本を代表するグローバル産業。内外のユーザー業界から技術力は高く評価されているが、この技術を継承し、さらに発展させる人材がいなければ、最先端の技術、製品を供給ができなくなる」

 日本工作機械工業会(日工会)の中村健一会長(中村留精密工業社長)は、人材不足に危機感を募らせる。

 ≪セミナー≫

 優秀な学生を工作機械業界に呼び込もうと、日工会は今月3、4の両日、全国の理系大学生を対象にした「工作機械トップセミナー」を山梨県富士吉田市で開いた。セミナー開催は昨年に続き2度目。今年は昨年より50人多い197人の学生、教職員が全国19大学から参加した。

 セミナーでは、工作機械メーカーを志望してもらうのが狙いで、初日は、中村会長らが業界の現状や工作機械の重要さなどについて講演。森精機製作 所、牧野フライス製作所、オークマ、ヤマザキマザックなど日本を代表する日工会会員企業17社が“自己紹介”した。2日目は、世界最大のCNC(コン ピューター数値制御)メーカー、ファナックの本社でCNCや産業用ロボットなどの生産現場を見学した。

 参加した学生からは「改めて工作機械の重要性を知った」「若い技術者でも工作機械の設計などに自分の能力を発揮でき、やりがいがありそう」といった声も聞かれ、セミナーを通じて工作機械業界への関心を深めたようだ。

 ≪知名度≫

 しかし、安定的に人材を確保できるまでは、超えねばならないハードルが待ちかまえている。

 「最大のネックとなっているのが工作機械業界の知名度の低さ」とオークマの江崎毅常務はこう指摘する。

 「学生は自動車や家電など完成品に興味は持つものの、その中身の部品、さらにその部品を作る工作機械には関心がないようだ。工作機械を専門分野 とする大学の教授や研究室も減少し、人材確保の場となる産学連携の規模が縮小していることも追い打ちをかけている」と若い人材確保の厳しさを吐露する。

 さらに、「工作機械メーカーの多くが地方に開発、生産拠点を設けていることも若者離れの原因の一つ」といった声もある。

 ≪中核不足≫

 工作機械業界の人材不足問題は、若手技術者の確保だけではない。

 「新しい人材を確保したとしても、育成を担う中核の人材が不足している」と牧野フライス製作所の矢澤孝二総務課マネージャは、社内の人材育成体制の問題点を挙げる。

 「拡大する需要に対応するのに手一杯で、人材育成に割ける時間も十分にない」(矢澤マネージャ)という。

 こうした中で、森精機製作所が売上高の1%(2006年度は約17億円)を人材育成費に充てるなど、好調な業績を背景に、人材育成に投資する企業も出始めている。また、ヤマザキマザックなどはテレビCMを放映、認知度アップに力を入れる。

 日工会、工作機械メーカーが人材確保に動いても、人材を教育する大学などの研究室の“工作機械離れ”が進んでは確保はできない。

 このため日工会の中村会長は、「大学が人材育成を担う機関となるよう、今後は産学連携をさらに強化していきたい。工作機械を専門に研究する学科 や研究室は年々減少しているが、基礎工学の重要性を全国の大学に訴えていく」とし、業界を挙げた取り組みを一段と強化する考えだ。

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工作機械業界での人材不足

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