仙台・中国人就学生無許可派遣 経済的不安につけ込む
仙台市内の中国人就学生ら延べ約600人から、3万―5万円の紹介料を徴収して無許可で仕事をあっせんしたとして、職業安定法違反や労働者派遣法違反な どの罪で、中国人の会社員高明哲被告(31)=仙台市宮城野区=が起訴された。狙われたのは、主にブローカーを頼って来日した福建省出身者。多額の手数料 をブローカーに払った揚げ句に、来日後はアルバイト探しさえ難しい。事件の背後からは、そんな就学生たちの苦境も浮かび上がる。
<「別料金」請求も>
「経済的な不安を抱えて過ごすことを考えれば、数万円を払ってでも仕事を求めたくなる気持ちは理解できる」。ネット上で中国人就学生の支援サイトを運営する李暁冬さん(25)=石巻市=が就学生の立場を代弁する。
「就学生の大半は日本に来ることが最終目標。きちんとした情報がないため、来日後の生活費まで考えている人は少ない」と指摘する李さん。手持ちの現金はすぐ底を突き、言葉の壁からバイトも見つけにくいという。
高被告は2003年4月に東北留学生支援協会(仙台市)を設立した。今年6月までに延べ約600人から紹介料約1800万円を集め、安い労働力を求める宮城、福島両県の企業に就学生を派遣した。
紹介料を取っていた就学生の大半は福建省出身者。高被告は同省出身の男性(29)をスタッフに加え、就学生たちにネットワークを広げていった。
福建省は海外で富を得た華僑が多く住み、日本語学校など、日本への就学をあっせんする悪質ブローカーの活動も活発だとされる。就学希望者から来日前に徴収 する仲介料は正規料金の6―8倍の100万―120万円。さらに「親が公務員では入国できない」などと言い、各種証明書類の偽造などさまざまな「別料金」 を請求する例も多い。
<総額200万円払う>
今回の職業あっせん事件の被害者ではないが、福建省出身の男子就学生(20)=仙 台市若林区=もブローカーに仲介料として総額約200万円を支払った。この就学生も「仲介料は日本語学校の紹介料だけ。渡航費用などは別」と打ち明け、 「みんなが払っているから普通の額だと思っている」と話す。
父親の月収は日本円に換算すると約3万5000円。200万円は“一世一代”の出費だ。仕送りはなく、仙台での生活費は2万5000円から3万円。
「食事はパンやカップめん。来日5カ月で4キロやせた」と言う。「(もし高被告らと)知り合っていたら、仕事の紹介を頼んだかもしれない。長期の安定した収入は中国から来た就学生には魅力」と漏らす。
入管難民法は、就学生が一日4時間を超えて働くことを禁止。さらに、各種学校に属する日本語学校が、就学生に無料でアルバイトを紹介することも職業安定法で認められない。
<ギャップ大きい>
仙台公共職業安定所は週2回、窓口に中国語通訳を置いているが、昨年度窓口を訪れた中国人就学生、留学生計107人のうち、働き口が見つかったのは8人だけだった。
就労可能な時間が一日4時間(留学生は週28時間)に限られているうえ、言葉の壁から受け入れに消極的な企業が多いためだという。
李さんによると、中国では「日本遍地是黄金」という俗言が広く浸透している。「日本ではどこでも大金を稼ぐことができる」という意味だ。日本に来れば、生活費くらいは簡単に稼げると思い込んでやって来る中国人就学生。その意識と現実のギャップはあまりにも大きい。
(報道部・菊地奈保子)
[中国人就学生]大学や専修学校専門課程などで学ぶ留学生に対し、主に日本語学校に通う人に認められる在留資格が就学。宮城県に住む中国人は2006年12月末時点で6827人、うち636人が就学生だ。
●●コメント●●
中国人就学生問題
0 件のコメント:
コメントを投稿