2007-09-20

【コラム】インド 広がる日本語教育

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インド 広がる日本語教育
インド関連のニュースが毎日メディアをにぎわしている。10月末からは日本航空の日本とデリーを結ぶ便も毎日となり、全日空のムンバイへの直行便も就航した。日本とインド、二国の距離がますます近くなってきている。
 日本企業のインド進出も加速度を増す一方だ。インド人にとって雇用の場も広がり、日本企業で働くのは待遇面でも魅力のある場となるだろう。今後日本語ができることは強いスキルになることは間違いない。
 以前日本語教育に携わった経験のある私は、インド人の日本語教育に強い関心を抱いていた。日本語教師時代、プライベートレッスンでインド人ビ ジネスマンを担当していた日本語教師の話を聞いたことがあった。攻撃的とも思えるほどの要求の多さと質問攻めに耐えられなくなり、担当教師は何度も交替し た。なかには精神的に追い詰められ、日本語教師を休職する教師もいたという。私自身もインドに暮らし始めてからのインド人の印象は、どうしても自己主張の 強さばかりが先に出る。彼らに対する日本語の授業は、相当やりにくいのではと勝手に思い込んでいた。
 デリー南部のHaus khasに位置する「日本語センター」を訪れた。2002年に名須川典子さんが開設した日本語学校である。今では日本語だけではなく、外国人にヒンディー語授業も行われている。
 教室への階段を上がる途中、すれ違った生徒からは明るく「こんにちは」と挨拶をされた。日本語の単語を復唱する元気な声が、教室の外にも聞こえ、活発な授業がうかがわれる。
 現在生徒は600人を超え、生徒は大学生やキャリアアップを目指す二十代の若者が多いという。クラス数は20あり、日曜を除く毎日午前・午後とも内容の濃い授業が行われている。
生徒たちの勉強する様子を尋ねたところ、決して自己主張ばかりではないという。
「確かに活発で意見をはっきり言い、性質も表裏はないですね。日本人が得意とする以心伝心はありませんが、日本人とは違う面で彼らなりの気の遣い方を感じることが多々あるんですよ。叱ってもカラっとしていて、根にもつようなことがないのが良い点です」と名須川さん。
 勉強熱心な生徒はあっという間に上級レベルに上がり、現在日本企業で活躍している卒業生も多数いるという。卒業して何年もたつのに、今でも手 紙や連絡をくれる生徒もたくさんいるそうだ。「日本語が上達していくにつれ、考え方なども日本人に似てくるような生徒もいるのが面白いですね」と笑ってお られた。
 授業の様子を窓越しに見せていただいたが、机に向かう彼らの様子は真剣そのもの。要求の多さや活発な質問も、情熱をもって学びたい彼らの姿勢 の表れなのだろう。先入観も手伝い「扱いにくいはず」とネガティブに捉えていた私だったが、学びあうことの大切さを今更ながら感じることとなった。
 名須川さんにとって学校を運営していく上での悩みはつきないが、やりがいのある仕事で充実した毎日を送られている様子がこちらにも伝わってき た。現在抱える問題は、長期で任せられる教師の確保や増加一方の生徒数に対応するための教室のスペースの問題。将来はインド全国に学校も増やしたいが目が 届かなくなると学校自体の質の低下などの心配もあり、なかなか踏み切れないようだ。「日本語の通信教育」も実現していきたいという。
 以前の目標だったツーリストへの短期語学教室も実施にこぎつけ、新たな目標に向かう。暮らしていくだけでも厳しいインドで、全力で日本語教育に取り組む日本人女性。忙しい毎日はまだまだ続く。
「ここでの活動はインドのためだけではなく、日本のためだとも思っているんです」明るくにこやかに、そう語って下さった名須川さんの笑顔が印象的だった。

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インドの日本語教育

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