日系人材ビジネス:中国事業を強化
日本の人材ビジネス企業の対中進出が相次いでいる。4年連続二ケタ成長という中国経済の急速な膨張で、企業の人材が払底しているためだ。このため、多くの中国企業は新卒を採用してじっくり育てる余裕もなく、即戦力になる中途採用市場の方が活発化しているという。
中堅の人材派遣会社、アヴァンティスタッフは9月から、江蘇省・南京市で、理工系学生に日本語環境でのIT技術や日本語などを教え、日系企業に紹介する事業を本格スタートした。中国最大の国営人材サービス会社「中国国際技術智力合作公司」や「江蘇マイクロソフト技術センター」と提携。同省内の南京、東南の2大学から学生を各500人程度募集し、日本語の集中研修も実施する。
来年には優秀な研修生の人選に入り、ビジネスマナーなどを習得させ、大学を卒業する7月以降、日系企業で就業してもらう計画だ。アヴァンティによると、中国の新卒学生の就職率は6割程度。一方、日系企業ではプログラマーやシステムエンジニアらのソフト技術者が不足しており、IT企業を中心にした紹介事業が成り立つと踏んでいる。
中国で人材紹介を手掛けているインテリジェンスは、9月から大卒者を支援する就職情報ウェブサイト「潜力新人」を開設した。上海の合弁子会社、「英創人材服務(上海)」が運営し、日系企業や中国企業の求人情報を無料掲載し、掲載件数は3万件を予定している。
利用者が増えれば有料広告に切り替える計画だ。新卒も将来的には転職する可能性があるため、早めに社名を浸透させて将来の“顧客”にしようという狙いだ。
テンプスタッフが昨年設立した「蘇州テンプスタッフコンサルティング」は今年2月から、蘇州市を中心に近郊の南京、無錫、昆山などでIT系人材の紹介・派遣サービスを開始した、4月からは人材育成事業も展開している。
■「世界の優良工場」へ脱皮なるか
こうした人材ビジネス企業の一連の動きの共通点は、中国の豊富な人材を発掘してビジネスに結びつけようという狙いにある。さらに、これからも企業の需要が増えるITエンジニアリング、財務マネジメント、労務マネジメントなど、企業経営に不可欠な専門職や管理職といった高度なスキルを持つ人材育成を図っている。
現在、食品を中心に中国製品に対する不信感が世界中で渦巻いているのも、品質管理や労務管理といった分野の専門家が少ないのが一因とみられている。その意味では、人材ビジネス会社の狙いは当を得ており、中国が「世界の工場」から「世界の優良工場」に脱皮するカギになるかもしれない。
実は、日中どちらの企業でも戦力になる「グローバル人材」が脚光を浴びており、敏感に反応している日本人も増えているが、それは次回に書こうと思う。
●●コメント●●
0 件のコメント:
コメントを投稿