以前は中国でも留学経験者は希少価値があったが、何年か前から中国に帰国してもなかなか就職できない人、あるいは希望より安い給与では就職したくないという人が増えている。日系企業の場合も現地で優秀な人材が増えてきたこともあって、そうした人材の給与は上昇傾向にある。逆に日本留学組の給与が停滞している。今後は、日本へ留学したことでこういうスキルが向上したなどを明確に現地社員にも示せないと採用は難しいだろう。現地で日本留学組と現地人材を雇用していて明らかに現地の人の方が優秀な場合もあるようだ。その場合、優秀な人材の方が低い給料をもらっていることになると現地社員に不満が溜まって、退職してしまうケースも見られる。
つまり、現地採用の優秀な学生と日本留学組が、新卒・中途採用(転職で帰国する留学経験者の場合)などで競合するということだ。中国国内の大学生・留学経験者が増え、余剰感が出ている。また、国内MBAプログラムの数も増えており、外資系企業で働く人の層も以前と比べて厚くなってきている。そのため、単に日本留学したというだけでは、希望する仕事への就職は難しいのが現状だ。「留学して本社でこういう業務を経験して、こういう専門的な能力を持っているから、私はこの役職に就いている。留学経験や本社勤務経験のない人ではこの業務はできない」ときちんと説明できることが求められる。
逆に言えば、中国ではまだ人事や広報などを担当できる人材は少ないので、日本でそういう経験をして戻ったとしたら、その人達の評価は高いだろう。外国人に人事を任せることに抵抗のある企業もあるが、現地化を進めていて中国人が主体的に採用などを行っている企業もある。どういう中国人が自社にとって必要な人材なのかという評価をするのは日本人だけでは難しい。
しかし、一般的に日本本社で外国人に業務を相当程度任せて育成していこうという日本企業はまだ少なく、日本本社でも留学生をいかに活用・育成するかを考えないといけない時期に来ている。中国でコア(核)となる人材を中国法人で育成すると同時に、ある程度日本でも育てるという感覚が必要だろう。米国企業の中国法人でも採用において何が必要条件かというと、やはり英語が堪能であることだ。本社への報告業務も厳しいため、きちんと英語が話せて書けることを非常に重要視している。本社の企業文化をよく理解していることも大事で、この点においては日系企業でも同じことだ。また、米系企業の場合、トップにシリコンバレーで働いていた台湾人や香港人、その他華僑系の人材など中国本土出身でない人材を登用している場合も多い。
英語と中国語が話せてマネージメント能力がある人材であれば国籍は問わないということだ。多くの日本企業は依然そうした体制にはなっていない。日系企業は現地の役員・管理職ポストに日本人がついていることが多く、彼らが出張することも多いので、結局トータルではコスト増になる。(執筆者:九門崇)
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