インド最大手のITベンダーであるタタ・コンサルタンシー・サービシーズ(TCS)は11月12日、組み込みシステム事業の拡大戦略を発表した。同社で 組み込みビジネスを統括するレグー・アヤスワミー副社長 エンジニアリング・産業サービスビジネスユニット グローバルヘッド(写真)は、「組み込みのオフショア開発で日本の技術者不足を解消し、かつ、世界のトップ企業との取引で蓄積したノウハウを日本向けに提 供していく」と話す。
TCSの戦略は大きく3つ。まず、来年12月までに100万米ドルを投入し、インドのプネに組み込みシステム専用の研究開発ラボを建設する。「タ タ・リサーチ・デザイン・アンド・デベロップメント・センター」と呼ぶこのラボでは、自動車と家庭用電化製品、電気通信、オフィス・オートメーションの4 分野について、日本向けのソリューションを提供していく。研究者や技術者は、インド人と日本人併せて100人体制で開始する。日本法人の本社にも組み込み 向けの研究拠点を開設する。
2つめの戦略は同じくプネに、組み込みシステム専門の日本向けオフショア・デリバリ・センターを開設すること。ここでは、「世界中のトップ企業と 協業して開発してきたノウハウをベースに、品質の考え方や要件定義を日本向けにカスタマイズしたフレームワークを使う」(アヤスワミー副社長)という。日 本向けのオフショア開発センター自体は昨年コルカタにエンタープライズ・システム向けを開設したのに続き、2カ所目となる。
3つめの戦略は、日本向けの組み込み技術者を、現在の500人から、2011年に最大4000人まで増員すること。そのため、プネやバンガロー ル、チェンナイにある工科系大学の3年生をあらかじめリクルートして日本語教育などを施していくという。アヤスワミー副社長は「インドでTCSの人気度は 高く、さほど人集めには苦労しないだろう」と見通しを話す。
経済産業省の調査(2007年版組込みソフトウェア産業実態調査)によれば06年、日本の組み込み技術者数は約23万5000人だった。05年からから4万2000人増えたものの、いまだに9万9000人が不足しているという。
同社のオフショアを利用した場合の開発コストについて、TCS日本法人の梶正彦社長は「びっくりするほど安いという訳ではない」と話す。「むし ろ、日本の技術者不足をカバーできる技術者の量と、レベル5のCMMI(能力成熟度モデル統合)を取得したプロセスの質、そして世界中のノウハウを使える 総合力に注目してもらいたい」(同)。特に、製品の開発サイクルの短期化に苦しむ企業にサービスを提供していく構えだ。
現在、TCS全体では6500人の組み込み技術者を抱えているが、これを11年に2万人程度にまで増員するという。「タタ・グループ全体で他社に 負けている部分を分析した結果、組み込みビジネスが浮かび上がったため、全社で強化に乗り出す。ライバルはこの分野で先行するインドのウィプロテクノロ ジーズだ」と梶社長は話す。
●●コメント●●
0 件のコメント:
コメントを投稿