2007-11-15

第7回 プログラマの叫び。ここにいたらつぶされる!

:::引用:::
「会社を辞めたい」。理由はそれぞれでしょうが、多くの人が一度はそう考えたことがあるのではないでしょうか。

 一昔前の状況とは異なり、現在は転職をしやすい環境になってきています。しかしそのためか、「何をしたいのか」「なぜ転職をするのか」という考えが不明確のまま転職活動をしている人も意外に多いと思います。

 今回は、忙しすぎる業務と会社への不満から転職活動を始めたあるITエンジニアが、本当の転職理由と目的を見つけ、成功するまでを紹介します。 藤川さん(仮名)は、中堅ソフトハウスに勤めて4年目のプログラマ。もともと父親がIT業界にいたこともあり、おのずとITに興味を持つようになって学生時代は情報処理を専攻。卒業と同時にいまの会社に入りました。仕事の中で学べることは多く、数多くのプロジェクトを経験し着実に業務をこなすことで、知識とスキルを身に付けていきました。そんな藤川さんは、若手ながら周囲からも実力を認められるようになっていまし
順調にキャリアを積んでいるように見える藤川さんですが、実は大きな悩みを抱えていたのです。

 藤川さんの会社は主に2次・3次請けの仕事を行っているため、中には納期までの期間が短く、非常にタイトなプロジェクトもありました。「任された以上、やるしかない!」という気持ちで、時にはモーター音を子守歌にサーバルームに泊まり込む日もありました。

 最初のうちは気力でカバーしていましたが、それもだんだんと難しくなりました。上司もフォローはしてくれず、仕事の成果だけを求めてくるため、モチベーションは下がりだしました。「もっと余裕の持てる案件はないの?」「要件定義ってプログラマのことは考えてくれないの?」。藤川さんの中に、疑問が生まれました。

 3年目に入ったころには、クライアントとの打ち合わせや新人教育などの業務も担当するようになりました。それまで以上の責任感を持って仕事に取り組むようになった藤川さんですが、同時に新たな不満も芽生えだしました。早くSE、プロジェクトリーダーになって上流工程を目指し、責任のあるポジションに就きたいのに、会社は年功序列の風潮が強く、実力があっても若い藤川さんにはそれが許されないのです。あるとき、新たなプロジェクトに加わるよう、上司から通達がありました。内容を聞いてみると、納期には到底間に合わないとすぐに分かるような案件でした。「これだけのシステムを、こんなに少ない人員でたった3カ月で作れなんて、どう考えても不可能です」。現場メンバーがそろって上司に訴えたものの、上司は「何とかできるだろう」の一点張りで、まったく聞き入れようとしません。

 「誰が、こんな要件定義をしたんやろう……」。藤川さんたちはがく然としながらも、やるしかありませんでした。

 スタートしたプロジェクトは、むちゃくちゃな見積もりのせいで想像以上の忙しさ。藤川さんたちメンバーには、自分の体調を気づかう暇もありません。納期を目前にしてもリリースの見通しはつかず、上司からは「なぜできない」と責められる始末。

 「だから、最初からできへんっていってるやん!」。無責任な上司に失望する中で、藤川さんは次第に「ずっと我慢してやってきたけど、うちの会社は全然なってない。こんな会社にいて、自分はつぶされるんとちゃうやろか……」とまで考えるようになりました。そして、転職活動を始めたのです。

私が藤川さんと会ったのは、そんなときのことでした。藤川さんはすでに何社かの人材紹介会社を訪ね、企業の紹介を受けていました。

 「転職はすぐにでもしたい気持ちだけれど、自分のいまのスキルで果たしてうまくいくのだろうか。もう少し、この会社で経験を積んだ方がいいのでは」。藤川さんの中には迷いがありました。

 何社かの人材紹介会社では「若くても、多少経験不足でも、目標がしっかりしていれば採用してくれる会社はいくらでもある」と聞かされてきたそうです。いろいろな企業を紹介してもらってはみたものの、本当に大丈夫なのかな? という不安がどんどん膨らみ、なかなか転職活動に踏み出せずにいるとのことでした。

 転職しようかどうか迷っているときは、迷いを捨てて一気に突き進むのか、立ち止まるのかをまず決めることが必要になります。中途半端に活動をしていては、気持ちのブレが生じます。

 また、転職は、必ずしもいいものとは限りません。必ずリスクがついてくるものです。覚悟が決まらないのであれば、動かない方が賢明です。その分じっくりと考える時間を持ち、気持ちを整理することも必要だと思います。私は藤川さんに、これらのことを話しました。

 藤川さんは私との面談後、いったん転職活動を休止することを決意しました。各社のコンサルタントからのアドバイス、紹介された求人案件をもう一度整理、分析、比較検討し、「本当にいま、転職をするべきなのか」をもう一度考えてみるとのことでした。


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特集何故彼らは転職考えたのか

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