関東や東海には一足遅れたが、関西のアルバイト時給が上昇カーブを描いている。景気拡大を背景に工場建設などが増え、全体に人材の不足感が強まっている。 阪神工業地帯など大型工場が稼働した地域では、業種を問わずアルバイトの確保に難航する企業も出始めた。ただ、人件費の増大が利幅を薄くし始めており、今 後も一本調子の時給上昇が続くかは微妙な情勢だ。
人材総合サービスのインテリジェンスが164の職種を対象に毎月集計しているアルバイト時給調査を基に年間の平均値を算出すると、今年の関西の平均時給(9月まで)は全職種で990円。前年比16円上昇し、直近でもっとも水準が低かった2003年比では67円高い。
首都圏を中心とする関東は1041円、好景気に沸く名古屋が引っ張る東海は1007円で、景気拡大がようやく関西の労働市場に波及し、アルバイト時給の上昇という形で表れたといえそうだ。
関西の時給を職種分類で見ると、製造業の軽作業や清掃などの「技能・労務」が昨年から横ばいだが、「飲食業」やカラオケ店、ガソリンスタンドなどの「サービス業」は着実に伸びている。
高校生から20歳代の若者に人気の飲食業の場合、大手外食チェーン各社がアルバイトの確保でしのぎを削っている。牛丼チェーンの吉野家ホールディングスは「東京都心部ほど深刻ではないが、大阪市内でもどうにか必要な人数を確保できている状態」という。
アルバイト時給が上昇した最大の要因は景気拡大に伴う労働需給の逼迫(ひっぱく)だ。アルバイトやパートのほか正社員を含む近畿の9月の有効求人倍率(公共職業安定所で扱った求人数を求職者数で割った値)は1.12倍。5年前の02年の平均は0.45倍に低迷していた。
製造業も人手不足は深刻だ。兵庫県尼崎市の臨海部には05年に松下電器産業のプラズマディスプレー工場が進出。現在は2つの工場でフルタイムの契約社員 など約1400人が働き、09年5月には約2200人に膨らむ予定だ。同年6月には隣接地にもう1つの工場が完成する。尼崎市内には中小企業の工場進出も 相次いでおり、アルバイトを含め人材の奪い合いが続いている。
尼崎市や周辺地区のサービス業を中心にアルバイト需給にもその余波が広がっており、最近は「求人の折り込みチラシを入れても、応募が1件もなかった」 (ガソリンスタンド)といった声が聞かれる。コンビニエンスストアのフランチャイズ店の経営者は、20歳代の男性2人を知人から紹介してもらい採用した が、「求人誌に掲載した数字より100円高い時給を払うことにして来てもらった」と打ち明ける。工場の軽作業などのアルバイトも不足気味という。
今後はシャープの液晶工場が建設される堺市臨海部などでも人手不足感が深まることも予想される。
商品を準備するアルバイト(大阪市北区のほっかほっか亭茶屋町店)
アルバイトに業務の大半を依存する業種では、時給を上げざるを得ない事情がある。弁当店チェーン「ほっかほっか亭」を運営するハークスレイは関西で過去3 年、毎年20円ずつ基本時給を上げている。人手不足が徐々に深刻になる中で、店を任せられる有能な人材を確保するには「時給を上げるしかない」(近畿第一 統括部採用担当チームの道端浩明係長)のが実情という。
人材の争奪戦は当面、続きそうだが、今後も一本調子で時給が上がる可能性は低い。原材料費が高騰する中、「これ以上の人件費増は経営を圧迫する懸念がある」(道端氏)ためだ。時給上昇が続いた関西のアルバイト市場も転換点を迎えているのかもしれない。
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