2007-11-26

中国ソフトウエア企業、成長の3パターン

:::引用:::
順調に成長する中国ソフトウエア産業の課題(4)-葛島知佳(NRI上海)

  中国のソフトウエア開発企業は、それぞれどのような成長を目指しているのだろうか。本稿の1回目でも触れたソフトウエア売上高上位100社の企業リスト(過去2年分、中国信息産業部が毎年発表しているもの)を利用して、主な企業を分析してみたい。

  対象は上位100社のうち、組込ソフトの開発を主たる業務にしているものを除いた企業の上位30社とした。下の図は、その30社を規模(2006年のソフトウエア売上高)と成長性(2005年から2007年の売上高成長率)でプロットしたものである。



  これを見ると、多くの企業が数十パーセントという高い成長を遂げていることがわかる。特に規模の面では神州数碼(デジタルチャイナ)が特徴的に高く、成長率も41.3%と高い非常に特徴的な位置にプロットされている。同社はもともとIT製品の代理販売を得意とする企業であり、ハードウエアを販売する強いチャネルを持っている。近年はそのチャネルを活かして開発したソフトウエアの販売が好調なことから、高い成長を実現しているといえよう。

  一方、用友軟件・金蝶軟件などパッケージ型の企業は伸び悩んでおり(用友は6.2%、金蝶は9.9%)、規模の拡大はそれほど進んでいない。両社はともに、中国におけるERPパッケージでシェアの1位と2位を争う大手企業だが、成長という意味では苦戦しているようである。両社は近年、成長を実現するために買収を盛んに進めている。用友は税務ソフトの会社を、金蝶は中小企業向けSIerを買収しており、同業他社の買収によって事業分野の拡大や顧客基盤と事業規模の拡大をめざしているようだ。

  また東軟集団(Neusoft)は、自ら私営のソフトウエア学院を設け、自社で人材を育成することによって規模の拡大を目指している。現在、大連、成都、南海にソフトウエア学院を設立しており、在校生の数は2万人以上に達している。そこではソフトウエア開発のための教育の他、オフショア人材育成のための日本語などの外国語教育なども行われている。東軟はこうして育成した人材を採用することで、自社が成長するための優秀な人材の囲い込みに成功している。同社はオフショアを含むソフトウエアの受託開発主体のSIerであり、上記各社のような販路や事業分野の拡大ではなく、優秀な人材を安定的に確保することが成長のポイントだと考えているように思われる。

  このように各社の特徴をみると、成長には以下の3つのパターンがあることがわかる。

  (1)販売チャネルを強みとした商材の拡大(神州数碼など)
  (2)M&Aによる規模の拡大(用友軟件・金蝶軟件・中軟など)
  (3)自社リソースで人員育成・確保(東軟集団など)

  中国のソフトウエア産業は、前回も述べたように、中小規模企業の集合体のようなところがある。しかし各社はそれぞれインドのタタやインフォシスのような巨大企業になることを目指しており、それぞれなりの方法で成長を実現し、競争状況から一歩抜け出そうと模索していることは確かだ。はたしてどの企業がこうした生存競争に勝ち残るのだろうか。中国のソフトウエア産業はいま、市場の拡大とともに成長する段階から、生き残りをかけて成長を目指す次の段階に入りかけているといえよう。(執筆者:野村総研(上海)諮詢有限公司・葛島知佳)

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