英会話学校最大手「NOVA」(大阪市)の倒産から26日で1カ月。この間、事業譲渡先が決定したり、30万人の受講生受け入れの動きが広がったり するなど事態は表向き収束に向かいつつある。一方で、職を失った外国人講師の再雇用は道半ばで、570億円の「前払い受講料」の返還も宙に浮く。説明責任 を果たさず、拡大路線のツケだけを残して去った猿橋(さはし)望前社長(56)は姿を消したままだ。米アイダホ州出身のデリック・アーチャーさん(22)は、茨城県取手市で1カ月間働いたが、一度も給料をもらえないまま教室が閉鎖され た。今は元生徒の自宅に居候させてもらい、なんとか暮らしている。インターネットで職を探すが、「まだ決まったところはなく、お金もない」。
米出身のニコラス・ファルチャーさん(27)は昨年9月に来日し、名古屋市と東京で教えていた。NOVAが借りていたアパートを出て、 都内の外国人専用ゲストハウスに移り、生活費を切りつめている。日本で働き続けたいが、職がなければ韓国の英会話学校への就職も考えるという。
NOVAの事業を一部引き継いだ学習塾「ジー・エデュケーション」(名古屋市)は再雇用を希望する元講師と元社員を全員受け入れる方針を打ち出したが、再雇用を希望した約1760人のうち同社が雇ったとしているのはまだ約半数で、多くは自宅待機中だ。
未払い賃金を立て替え払いする国の制度もあるが、請求手続きには時間がかかりそうだ。厚生労働省によると、東京や大阪、福岡など8労働局の特別窓口に寄せられた雇用保険や未払い賃金、再就職の相談件数は、4000件近くになっている。
帰国した元講師もいる。オーストラリア人のジュリー・ピジョンさん(26)は東京で教えていたが、「金銭的に限界」として20日に日本を たった。「生徒と別れるのは本当にさみしいけど仕方がない」。日本で働きたいという友人がいたら、「学校選びは慎重に」と助言するつもりだ。
ジー社は08年5月までに「200教室体制」に広げると表明しているが、NOVA倒産時の約670教室と比べて3分の1以下だ。これまでに再開された教室も15にとどまっている。
一方、受講生受け入れの動きは広がっている。業界団体「全国外国語教育振興協会」(66社)は、経済産業省に計1万人を受け入れると報 告。「民間語学教育事業者協議会」(24社)は5000人程度で検討している。ただ、570億円に上るNOVAの前払い受講料の返還については、保全管理 人は「受講生の手元に戻る確率は非常に低い」と話す。
猿橋氏は、代表取締役を解任された10月25日夜、広報担当者に電話をかけ、マスコミに解任の事実を否定するよう指示したとされる。この後、猿橋氏は姿を消した。
猿橋氏をめぐっては、英会話用機材取引をめぐってNOVAに数十億円の損害を与えた疑惑が浮上し、保全管理人が会社法の特別背任容疑での告発を検討。講師らの給与遅配についても、大阪労働局が労働基準法違反容疑で立件する方向で調べを進めている。
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