2007-11-16

【8人の女性技術者に聞きました】第5回 「日本の女性の上昇志向,それを何とか盛り上げたい」

:::引用:::

当時から,米国には女性が仕事や勉強を続けるためのサービスが整っていました。お金は掛かりますが,保育園でもベ ビーシッターでも何でもありました。朝早く授業を一つ受け,昼間は仕事をして夜にまた授業を受けると,1年で修士を取れるシステムなどもありました。そろ そろ日本に帰ろうと思っていた時,この会社に声を掛けていただいて。当時はまだ女性の専門職の採用が少なかった時代なのですが,インタビューしてくれた役 員の方が非常にリベラルな考えの人で,「専門家として仕事をしてほしい」とだけ言われました。

――その後,研究者,研究マネジャーとして活躍なさる一方で,女性技術者の問題にも携わってこられた。日本で女性の技術者や研究者が少ない理由は何だと思いますか。

國井 文化的なもの,教育的なもの,親の見方,日常生活の中のちょっとした表現など,いろんなものが重なっていると思い ます。ついこの間まで,中学生になると男子と女子で職業教育と家庭科に分かれていましたよね。男性は仕事,女性は家庭という考え方を定着させる教育だった んですよ。それは簡単に変わらないです。今の親はみんなその世代ですから。日本の女性は優秀な人でもほっておくと上昇志向が非常に低いんです。出産とか育 児とか時間的な制約が引け目になって,積極的に前に出られないんですよ。その結果,女性というグループ全体の評価が下がり,それが差別を生みやすくしてい る。女性を差別しているなんて考えている人は今の日本の大企業には一人もいないと思うんですが,部下のキャリアに対する指導などの場面で,いつの間にか差 別を生んでいます。優秀な女性には責任のある仕事を与えるべきなのですが「家庭が大変だろうな」と,どうしても小さな仕事をアサインしてしまう。

――それに対して,いろいろなチャレンジをなさっている。

國井 パイオニア的な女性が実績を出して,それを見た人が「そういう形なら私にもできるかも」と思い始めれば変わると思 うんですよね。でも,管理職の人は実績のない女性に大きな仕事を与えにくいという問題がある。大事なのは「女性だから」というようにひとくくりに考えず, あくまで個人としてキャリア・プランを一緒に描くことだと思います。

ここはリコーの研究部門の中でも一番女性が多くて,私が入社したころには先輩の女性はみんなお子さんがいて「ああ,女性でも普通に仕事できるんだ」 という認識でした。私も子供を一人産みましたが,ちょうど1年間休暇を取って復職しました。よく,休んでいる間に会社に戻りたくなくなる人もいると聞きま すが,私の場合は,逆に早く会社に戻りたかったですね。ホントに子育て中は昼も夜もないので,大人相手に仕事をしていた方がずっといいなと(笑)。

――休暇中,仕事から離れていて不安になりませんでしたか。

瀧川 休んでる間にいくつか新しい出来事が起きて,ちょっと戸惑うようなことはありましたが,技術の根本は変わりません ので特に不安はありませんでした。休暇中も会社のネットワークとつながっていましたから,メールも来ますし社内情報もちゃんと分かります。時には,私が育 休に入っていることを知らない人から,ずいぶん前にやった仕事のサポートでどんどんメールが来て,その都度,すごく長いメールを返したりして,これってお 給料出ないのかしらなんて思ってました(笑)。

――瀧川さんの今の目標は。

瀧川 自分なりにキャリア・パスをつくろうとしているんですけど,技術の先が見えなくて難しいですね。5年後くらいは見 えても10年後にどんな仕事をしているかはなかなか分からない。ただ,技術者としては,ある分野で分からないことがあったとき,社内で真っ先に名前が挙が るような存在になりたいなとは思ってます。


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