2009-07-23

外国人研修制度/抜本的な見直しが必要だ

:::引用:::
  発展途上国への技術移転を目的とした「外国人研修・技能実習制度」で、来日中の外国人が死亡するケースが目立っている。2008年度は過去最多の34人だった。受け入れ企業などの管理態勢が厳しく問われる。

 事業を支援する国際研修協力機構(JITCO)によると、中国などアジアから毎年約6万人の外国人が日本に来ている。死亡者は昨年度、一気に13人増えた。ほとんどが20、30代で、死因のトップは「脳・心臓疾患」だ。

 34人の死は、日本人労働者の解雇の嵐の時期と軌を一にしている。研修生問題を扱う弁護士連絡会は「多くが、低賃金で長時間労働を強いられている」と過労死の可能性を指摘し、厚生労働省に原因究明を求めた。

 本当に過重労働が死亡の原因なら、それは制度が抱える構造上の欠陥と言わざるを得ない。

 1993年創設の現行制度は本来、人材育成事業だ。初年度はあくまで研修で、就労は認められない。その後の2年間の技能実習段階で労働者扱いとなるが、全期間を通じ日本人に代わる安い労働力として使われているとの批判が根強くある。

 所定外作業や賃金不払いなどトラブルは後を絶たず、受け入れ企業の不正行為は昨年、549件と過去最多を更新した。研修生に月160時間以上働かせたり、実習生に時給200円しか支給しなかったケースのほか、旅券や預金通帳を預かったまま返さない業者もいた。

 厳しい局面に追い込まれる外国人の中には、出稼ぎ目的で来日し、なすがままに従った人も多いのだろう。労働力供給ビジネスが研修制度に複雑に絡みついている。「日本の企業や仲介するブローカーが、制度を都合よく利用している」と訴える被害者は少なくない。

 人材育成を通じた国際貢献という本来の趣旨が十分達成されていないのなら、研修制度は抜本的に見直されるべきだ。

 今国会で成立した改正入管法は、入国3カ月以降の研修生にも労働関係法が適用されるよう改めた。外国人の権利擁護の環境を整えた点では一歩前進と言えるが、関係機関が協力し不正を厳しくチェックする態勢づくりが一層求められる。

 福島県内では、大学の研究者や弁護士らが連携し、研修生の待遇改善に向け支援するネットワークが昨年発足、活動を展開している。事務局は「問題のある零細企業を追及するだけでは解決にはならない。外国人の救済と企業の啓発の両面から支援していく必要がある」と言う。自治体も交えた地域レベルでの支援態勢の広がりが望まれる。

 見直し論の中には、技術移転の建前論にこだわるのでなく、必要な外国人労働力を真正面から受け入れ、定住も認めるべきだという思い切った案もある。

 単純労働力の市場開放は、国内の雇用問題との兼ね合いで慎重な議論が必要だろう。しかし、トラブルを引きずりながらの制度継続が、もう限界に来ているのも事実だ。改正法施行後の効果も見極めつつ、さらに幅広い改革議論を深めたい。
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