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6月に大学を卒業し、7月から銀行で働き始めた上海出身の女性(22)は、両親から「上海人以外の人との結婚は絶対にダメ」とクギを刺されている。両親がそう言うのは、もちろん上海出身だからということもある。しかし、それ以上に「地方出身の男性と結婚しても、生まれる子供が上海では普通に教育を受けられず、幸せになれない」と考えているためだ。
上海市など中国の都市部では、教育の機会均等や、医療保険、年金といった社会保障は、その都市の「戸籍」を持つ人のための行政サービスと位置づけられている。区域外から移り住んできた人は対象外だ。地方出身者が「上海戸籍」を取得するには、15年以上の上海居住歴や納税実績など、高いハードルがある。
国籍とは別に、都市部と農村部で大きく区分けされる出身地ごとの「戸籍」が生涯ついて回るのが、中国人の宿命といえる。両親が農村部の戸籍しかなければ、子供もその戸籍しか得られない。都市への人口流入を防ぎ、農民を農村部に縛り付けておく制度だ。戸籍による事実上の差別が、「都市」と「農村」という“断層”をつくり出しているようにもみえる。
上海市の場合、昨年末の常住人口は1888万人。このうち上海の戸籍を持つ人は1371万人しかいない。上海以外の戸籍を持つ517万人や、常住人口にも入らない出稼ぎ農民ら数百万人は、差別的な扱いに強い不満を抱いている。
その不満を少しでも解消しようと上海市では、全土に先駆けて戸籍付与条件を緩和する「居住証保有者の戸籍申請試行弁法」を施行し、6月から申請の受け付けを始めた。就職先の機関や企業などを通じ、「必要な人材」として「上海戸籍」を申請してもらうことができる。ただし、戸籍の付与は初年度は3千人の枠しか認められない。戸籍による差別解消への道のりは長い。(上海 河崎真澄)
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