2009-07-24

日本文化、タイ人留学生が継ぐ 日本航空高校の吟詠剣詩舞

:::引用:::
 詩吟にあわせて剣を舞う吟詠剣詩舞(ぎんえいけんしぶ)に、山梨県内の高校の部活動で唯一取り組んでいる日本航空高校(甲斐市)の「剣舞隊」が、7月から三重県で始まる全国高校総合文化祭(総文祭)に県代表として出場する。県内の競技人口が減り、同校でも部員が減少するなか、伝統芸能を支えているのはタイからの留学生6人だ。羽織はかまに刀を差して鮮やかに舞い、日本の心を表現している。

 部員8人のうち、日本人は2人だけ。2年生の女子4人と1年生の男子2人はタイ人留学生だ。道場に部員が集まると、たどたどしい日本語がにぎやかに飛び交う。

 2年生のプリヤーパット・ポンチャルーンさん(16)が入部したのは「刀を使えたら格好いいと思った」から。寮で相部屋のクナポン・デットラッタナウィチャイさん(16)は「日本の文化を学びたい」と門をたたいた。

 はかまの着方も帯の締め方も知らなかったが、そこは部長の篠原渚さん(17)が、いちから全部教えたという。

 吟詠剣詩舞は、戦国時代に戦の勝利を祈願して剣を持って踊ったのが起こりだという。明治時代ごろから、刀を振りかざしたり扇子を広げたりして、詩の世界観を観客に訴える芸能の一つに育った。

 剣舞は全身に神経を集中させて、心の機微を微妙な所作の違いで表す。「見るほど簡単ではなかった。足も腕も固くなるほど疲れた」。入部当初の1年前を、プリヤーパットさんはそう振り返る。

 模造刀とはいえ、大きさは真剣とほぼ同じ。長さ約70センチ、重さ約800グラムの刀は腰から抜くのも苦労した。足の運び方から指先の使い方などの基本的な練習を何度も続けて、ようやく形になってきたという。

 プリヤーパットさんやクナポンさんには、部を存続させる貴重な担い手としての期待もかかっている。

 剣舞隊は80年に創部し、多い時は30人の部員がいた。しかし、ここ数年は約10人で推移。顧問の中沢圭子教諭が「県内唯一の部を絶やしてはいけないという責任を感じていた」昨年、プリヤーパットさんたちが入部した。

 日本人になじみが薄くなっている伝統文化を海外の生徒が受け継いでくれるのは「うれしかった。総文祭では、県外の生徒からたくさん刺激をもらって欲しい」と話す。

 総文祭には日本人生徒2人とプリヤーパットさん、クナポンさんの4人で出場する予定だ。創部以来、講師を務めている木之瀬厚生さん(68)、千恵子さん(60)夫婦は「恥ずかしがったり遠慮したりせず、意欲的に学ぶから覚えが早い」と2人を評価している。

 「ずっと楽しみにしていた舞台。剣舞が好きな他の高校生と話をしてみたい」。あこがれの総文祭を前に、ますます練習に熱が入っている。(福山亜希)

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