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このところ、日本株の米国株、アジア株に対する出遅れが株式市場で話題になることが多い。確かに、7月21日時点で、日経平均株価は、1万円を越えていた6月高値を更新できないでいる一方、ダウ工業株30種平均とS&P500種株価指数はともに、7月20日時点の終値ベースで6月高値を更新している。また、香港ハンセン指数は同時点で直近高値はもとより、リーマン・ショック直前の数字をも更新してきている。実体経済に目を転じると、中国経済が大型財政出動や内陸部の消費喚起策の奏功でV字型回復を見せ、世界不況の中で一段と存在感を高めている。こうした中、いわゆるジャパン・パッシング、日本素通り論が出やすくなっている。
しかし、本当にそうであろうか。10年後、20年後ならいざ知らず、ここでの日本素通り論は十分な根拠をもっていないと考えている。
第一に、株価の出遅れは公募増資の増加に伴う一時的な株式需給の悪化、および円の上昇に負うところが大きい。円高分を調整したドル建ての日経平均株価でみると、7月21日には6月高値近辺に戻っている。少なくとも為替市場では円は買われており、日本素通りではない。
第二に、景気や企業収益の予想は欧米市場に比べて見劣りするものではない。日本の実質国内総生産(GDP)は景気対策効果とアジア向け輸出の恩恵で、すでに4~6月からプラス成長に戻りつつあるが、欧米はまだマイナス成長予想だ。もっと重要な企業収益では、2007年(年度)を100として2010年(年度)予想を指数で示すと、世界全体の62に比べて日本は60とほぼ同じだ。一方、米国、英国とも54で英米をしのぐ。
第三に、中国経済の存在感の高まりは、現政権の政策運営のうまさに依拠しており、世界不況の中での健闘は大いに評価される。ここでのポイントは日本と中国は産業構造が補完的で、中国経済の成長は日本経済にプラスであることだ。欧州が中東欧の不振の影響を甘受せざるを得ないのに比べれば隣国の高成長はむしろ喜ばしい。
第四に、ハイブリッド車や電気自動車などの環境対応車、太陽電池、原子力発電、発光ダイオード(LED)照明など代替・省エネ技術で優れていることも重要だ。6月10日の当コラムで、ケインズとシュンペーターが経済と株式市場を救うと述べたが、長期的により重要なのはシュンペーターのいうイノベーション(技術革新)である。特に、二酸化炭素(CO2)削減が最大のテーマになる中、環境技術での日本の優位は極めて大事な評価ポイントだろう。
このように考えると、日本素通り論は悲観的な見方として片付けられるだろう。先のコラムでも主張したように、日経平均株価1万円は中期的には通過点に過ぎず、10年まで視野に入れると、さらに上昇する公算があるとの見方を再確認しておきたい。
最後に、留意点について2つ触れておきたい。ひとつは政治動向だ。自民・公明の与党と、民主党との政権選択選挙となるが、どちらが勝つにしても安定多数の確保が株式市場にとって大事だろう。少数政党がキャスティングボードを握り、安定感を欠く選挙結果がリスクといえる。
もうひとつは、米国型モデルへの偏重を修正するのはよいとして、それが行き過ぎて株主軽視のかつての日本型経営に戻ることだろう。(選択と集中や新興国への展開、環境ビジネス重視を通じた)企業価値の創出と投資家向け広報(IR)と投資家重視。この点はおそらく崩れないと思うが、政治以上に重要な留意点のような気がする。
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2009-07-23
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