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中国政府の公式発表によれば、今年の大学卒業生は史上最多の610万人にのぼり、就職浪人約100万人を加えると、計710万人もの大学卒業生が職を探さなければならないことになる。
これはあくまでも政府公表の数字であり、実際もっと多いかもしれないと指摘する関係者もいる。さらに、欧米を中心とする海外留学生の大量リターンも無視できない現実である。例年では大学生の就職率は卒業半年後に約80%台であったが、今年はもっと厳しくなるに違いない。最悪の場合、政府が目指している 70%の就職率を大幅に割り込む事態が起きる可能性すらある。
最大の要因は金融危機の影響で企業の業績不振によって求人枠が激減していることである。加えて、すでに就職している大学卒業生の多くは仕事に対する満足度が低く、離職・転職を考えている者が非常に多い。彼らは再就職予備軍として新卒者の就職先を虎視眈々と狙っている。
こうした厳しい状況に直面している政府は今年に入ってから、一連の就職支援策を打ち出してきた。
新年早々の1月19日、国務院弁公庁は「普通大学卒業生の就職関連業務の強化に関する通知」を通達して、全国の大学および各地方政府に対して積極的な対応を求めた。
その後、中央の関係省庁は毎月のように関連政策を公布しているが、その分野は多岐にわたる。3月17日教育部が出した「国家が普通大学卒業生の就職を促進する政策の公告」は現在の大学卒業生就職支援策をほぼ網羅しており、政府の各種の取り込みを理解する上で非常に役立つものである。
同「公告」は計5分野20項目の支援策を明らかにしている。5分野は、その一、大学卒業生が末端社会、中西部地域で就職することを奨励すること、その二、大学卒業生が解放軍に入隊することを奨励すること、その三、優秀な大学卒業生を積極的に起用して国と地方の重要な科学研究プロジェクトに参加させること、その四、大学卒業生が中小企業で就職する、または起業することを奨励すること、その五、貧困家庭の大学卒業生の就職支援を強化することである。
ここでは解放軍入隊の奨励策を見てみよう。それは具体的に5項目の優遇を挙げた。(1)政府が学費を払い戻し、修学援助貸付(一種の教育ローン)を本人に代わって返済する。(2)士官ポスト配属、軍事学校受験、技術ポスト配属などの面で優遇措置が適用される。(3)退役後、政治・法律専門大学が警察・検察・裁判の基層部ポスト向けに募集する養成課程の試験を受ける際、優遇される。(4)高等職業学校(高等専門学校)の学歴を持つ者は、退役後に社会人四年制大学に入試免除で進学できる。また、審査を経て、普通四年制大学に進学できる。(5)退役後、大学院修士課程に出願する場合、第一次試験の取得点数に 10点が加算される。軍功二等功以上を授与された者は、退役後に入学試験免除で大学院修士課程に推薦入学が認められる。
これらの対策は従来と異なり、利益誘導の性格をかなり強めているといえる。ただし、どこまで効果を発揮できるかは、いまのところよく分からない。学費の払い戻しや教育ローン返済の肩代りといった直接の金銭給付は比較的貧しい家庭出身の大学卒業生が大きな魅力を感じるかもしれない。一方、家庭の経済的状況が平均以上の者は果たして数万元のためにもともと行きたがらないところで就職するのか、まったく未知数である。(執筆者:王文亮 金城学院大学教授)
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