2007-11-09

IT人材獲得で中国へ 日本企業が知らない中国IT業界の現実(1)

:::引用:::

○中国IT人材めざす動きが加速

日本国内で不足しているIT技術者 - とくにWeb系システムエンジニア-の獲得を狙い、中国に進出する企業が急増している。背景にあるのは、インターネット経済の進展、電子商取引の普及と いった趨勢に対応できない国内におけるIT技術者の慢性的不足という深刻な事態だ。

IT人材の不足感を解決しないことには、上り坂だったはずの企業業績も先が見えてしまう - こうした危機感が、海外、とくにインドや中国といった、優れた理工系学生を多数輩出しうる国の人材を獲得しようという明確な意思となって、各企業を突き動かしている。

シリコンバレーでは、すでに久しくいわれる「IC」(インド人と中国人)人材獲得に、日本のIT業界もようやく本腰になってきたということだろう。

国 内業界を取り巻く深刻な人材飢餓感を反映し、日本政府もようやくその重い腰を上げはじめた。すなわち、森首相は今年夏のインド訪問にあたり、同国からの IT技術者受入を促進していく旨を表明したし、10月に訪日した朱鎔基中国首相とは、財界からの要望に応える形で、中国人IT技術者の受入手続き簡素化で 合意した。

これに呼応するかのように、個別企業レベルでも、あるいは大手人材派遣会社パソナなどまでが、インドや中国から のIT技術者受け入れに向け、積極的な動きを見せ始めた。なかでも、すでに多くのアメリカ企業が提携先を確保したインドを避け、地理的にも、文化的にもよ り近い中国に人材を求める傾向が最近は強まっている。

○外国なら行きたい、は過去の話

多くの日本企業が中国人IT技術者に注目するなか、しかし過去の雇用経験から懸念を 示す採用担当者も実は少なくなかった。つまり、中国人はあまりに個人主義的で、上昇志向が強いのはいいが、せっかく採用してOJTを実施しても、他社から より良い条件を示されたり、事業機会を見つけると、あっさりと退社していってしまう。いわゆるジョブホッピングに対する懸念である。自社の労務管理には疑 問を向けることなしに、とかく「扱いにくい」と評される中国人技術者の「就業意欲」を批判する経営者も少なからずいる。

だ が、国内の人材難は、少子化と理数系教育の全体的なレベル低下という逆風のなか、ますます深刻なものとなりつつある。こうしたなかで、もはや背に腹は代え られずと、中国人技術者雇用に向けて、国内IT業界の関心は高まるばかりだ。そして、中国と日本の賃金格差を考えれば、当然日本で働きたいと考える中国人 技術者も多いはず - こうした判断が日本のIT関連企業の間に広まったのも、ごく自然のことであった。

たしかに、中国と 日本の賃金格差は、現時点でも非常に大きい。一般労働者の賃金を単純に比較すれば、比較的経済発展の進んだ上海や大連といった沿海都市でさえ、日本の15 分の1から20分の1程度である。まして、国有企業の破綻で失業問題が深刻な内陸では、事実上生活費収入の道を絶たれた社会層が数百万単位で存在してい る。こうした状況をマクロ的にみるならば、高い収入を得られる職場が海外、それも先進国にあれば、先を争ってでもそのチャンスを得ようとするはず - 誰もが当初はそう予想したのである。

ところが、こと世界中で求められているITエンジニアに関する限り、事態はそれほど単純ではなかった。

中 国国内市場でのIT人材への需要が、近年急激に高まっていることが、その背景にある。たとえば、年間200名規模で優れた情報技術分野専攻の学生を送り出 す大連理工大学管理学院の武春友院長(教授)によれば、「外国であればすぐにでも行きたいというのは過去の話」であり、いまではむしろ、北京や深センなど の民族系成長企業が、初任給6,000元から8,000元(日本円でおよそ約8万円から10万円)で優秀な学生を青田買いしていくという。

こうした金額は、絶対額としてみるなら確かに日本国内とは比較にならないわけだが、最も注意すべきは、物価自体が日本の10数分の1というレベルのなかでの「初任給6,000元」という点だ。

実 は、初任給6,000元という数字は、それ自体一般労働者の10倍近い金額なのだが、問題は、単なるこうした基本給だけではなく、実力に自信のある中国人 エンジニアが好む完全能力給の給与システムの上、普通はさらにストックオプションが加わり、場合によっては、住宅購入資金(頭金)の無利子貸与、五年間就 労した後には学費企業負担で米国への留学もできるといったあの手この手のオプションが優秀な人材に対しては提示されているという点なのだ。

現在の中国にあっては、とくにIT人材が集まる沿海都市では、カネさえあれば、ほとんど先進国並みの暮らしが享受できる。月給6,000元がとれるのなら - その給与に見合った忙しさからは免れ得ないかもしれないが -、メードを二人雇用し、週末は毎晩ナイトクラブ通い、買い物は毎度外資系の洒落たデパートといった贅沢な暮らしさえ十分可能なのである。(続く)

●●コメント●●
中国IT技術者

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