2007-11-16

グーグルも勝てない中国検索エンジンの巨人

:::引用:::
07年11月、第3四半期の中国サーチエンジン市場でのシェアが発表されました。それによるとナンバーワンは「百度」、シェアは実に60.5%です。2位グーグルの23.7%を大幅に引き離し、ダントツのトップに君臨しています。

  今年4月、中国のネット検索最大手の百度(バイドゥ・ドット・コム)は出井伸之ソニー前会長を社外取締役に迎えたと発表し、業界に衝撃が走りました。中国企業が海外の著名経営者を取締役に迎えるのは珍しいことで、「日本での検索事業の発展につなげたい」と「百度」の李彦宏最高経営責任者は話しています。「百度」は米ナスダックに上場していますが、今年3月に日本語での検索サービスに参入して4月には出井氏を社外取締役に迎え、本格的な日本市場での検索サービス事業の展開を開始しました。

  日本の検索市場は独特で、インターネットの発展の初期にはヤフー1社が市場を独占、その後グーグルが参入し、2社の寡占が続いています。しかしこの2社の中国でのシェアは2位と3位、「百度」は中国市場で打ち負かした2社に、日本市場での戦いを果敢に挑んだというわけです。

◆他を圧倒する「百度」の中国シェア

  2000年1月に北京の中関村で誕生した「百度」は7年後の2006年における中国シェアを62.1%と伸ばし、中国検索業界の最大手に君臨、グーグルの25.3%をはるかに凌いでいます。百度の中国語サイトインデックスは30億件と現在世界一、そしてAlexaの調査でも中国で最も多く、世界でも4番目に多く使われているサイトに成長しています。世界の流れと同じく現在の中国ネット業界も検索を中心に回り始めており、競争が激化しています。

  虎視眈々と中国市場を狙う世界の巨人グーグル、中国市場で辛酸を舐めてきたヤフーの巻き返し、中国ネット企業の先駆けであるポータルサイトの「新浪」「捜狐」「網易」の新規参入――。中国検索市場でシノギを削るプレイヤーたちの中で、「百度」はまさにただ一人、快進撃を続けています。

◆「百度」が圧倒的に強い理由

  なぜ「百度」が中国市場で圧倒的な強さを誇れるのか。その理由としては、以下の4点が挙げられます。

  1.検索サービスに特化しつつも、コミュニティ機能を搭載してユーザーのサービス乗り換えを防いでいること。

  ユーザーが質問、回答しあえるQ&Aサービスの「知道」やトピックごとにユーザーが掲示板をつくれる「PostBar」、ユーザーが辞書を自分たちで作っていく「百科」、また音楽や映像の検索、ブログサービスなど次々と新サービスを提供し、ユーザーがさまざまなサービスを一カ所で利用できるようにしていることです。

  2.広告主への販売ネットワークの強さ。

  直販営業部隊と代理店の両方を持ち、中国全土に顧客を持っています。代理店の数は200社以上ありますが、これによって同社は、大企業だけでなく中小企業の顧客も数多く抱えることに成功、広告主は10万2千社以上にのぼっています。

  3.中国語に強く、中国文化や中国のユーザーの好みを把握していること。

  4.経営陣をはじめ、優れた人材がそろっていること。

 ◆なぜ「百度」は、日本進出を選んだか  

  2006年12月4日、「百度」は同社の国際化戦略のターゲットとして、日本の検索エンジン市場に進出すると発表。翌日、これに反応した同社の株価は3.31%上昇しました。

  「百度」が世界進出の手始めに日本を選んだ理由は、日本は世界第二位の経済大国であり、市場が非常に大きいこと。日本のネット広告市場は前年に比べ50%以上も成長しているのに、市場競争はそれほど激しくなく、ヤフーとグーグルの二社だけが争っているという、異常な市場構造が続いています。これが「百度」に狙われた要因で、中国で2社との競争に打ち勝った「百度」ならではの選択ではないでしょうか。

◆創業者李彦宏氏の「百度」

  「百度」は創立7年のベンチャー企業、中国の検索市場においてどうしてこんなに強いのかを知るには、その歴史をさかのぼる必要があります。

  百度の創業者、李彦宏氏は90年代初期の中国からアメリカへの留学組で、検索大手の米インフォシークに勤めた後、1999年末にアメリカのベンチャーキャピタルの融資を引っさげて中国に帰国、「百度」を創立しています。つまり、当初から中国語検索に絞ってナンバーワンになろうと地道に開発を行い、今日の確固たる地位を確立したというわけです。

  そんな李彦宏氏率いる「百度」、その果敢なチャレンジ精神は次なるターゲットを日本と捉え、日本の市場を塗り変えようとしているようにみえます。(執筆者:内田俊彦)

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