2009-02-18

検証 09県予算<上> 緊急雇用・経済対策

:::引用:::
求人を検索するパソコンの前に求職者が詰めかけ、職業紹介窓口には多くの外国人が行列を作っていた。今月12日、津市島崎町のハローワーク津1階。昨年末まで自動車部品工場に勤めていたという40歳代の男性は、「早く仕事を見つけないと生活できない。今週、水道を止められる」と険しい表情で話した。

 同じ頃、2階の多目的会議室。「県内のハローワークに来ている求職者は、年明け以降、前年同期比で8割増だ。矢継ぎ早の対応をお願いしたい」。三重労働局の村上竹男局長は、局員や県内各地の公共職業安定所長ら約30人を前に、“緊急事態”を告げていた。

    ■  □

 同労働局などによると、県内の有効求人倍率は、昨年5年ぶりに1倍を割り込み、12月で0・90倍。悪化は6か月連続だ。数か月間で、自動車や電子部品など製造部門で前年比70%近く新規求人を減らし、同労働局は、昨年10月から3月末までで4062人が解雇や雇い止めになるとみている。

 県の新年度当初予算案では、雇用対策に35億9967万円を見込んだ。次の仕事が見つかるまで臨時職員とするなどの事業や、地域で雇用機会を作ってもらうための「ふるさと雇用再生特別基金事業」で、計約850人の新規雇用創出を目指す。経済、生活対策にも30億円以上を投じ、中小企業の支援や離職者の住居確保などにも取り組む。

 しかし、16日に開かれた県議会全員協議会で、「ふるさと雇用の事業で民間とどのようなな段取りをつけ、継続的な雇用を創出するのか」「経済対策で、新規に取り組む部分はどこなのか」などの疑問に、執行部側は具体的な回答を示せなかった。

    □  ■

 雇用が厳しい情勢にある一方、福祉・介護分野などの業界の人手不足は深刻だ。2005年時点での県内の福祉・介護職員は1万7000人だが、今後、高齢化社会の急激な進行で、25年までに約3万人が必要となるという。県は離職者に、職場体験を通じて技術やノウハウを学んでもらう取り組みを実施する方針だが、県社会福祉室は「業界側は、資格者や経験者を求めている。機械相手に作業をしてきた人が、いきなり人の生死にかかわる仕事に就くのも、現実問題として難しい」と、「需要と供給のギャップ」の課題を指摘する。

 「終身雇用が保証されていた頃の不況とは違い、今は雇用そのものが危機に直面している。マッチングの問題も深刻だ。打ち出した対策を通じて新たな課題が見えるのは、まだ先になるだろう」。県予算調整室の高間伸夫副室長は、新年度予算で取り組む事業の実効性について、「ある意味、賭けの部分が大きい」との認識を示す。

 今後、県に求められるのは、情勢を敏感にキャッチしながら、補正などで継続的に雇用・経済対策に取り組んでいく柔軟な姿勢だろう。

     ◇

 県が13日に発表した新年度当初予算案を巡り、野呂昭彦知事は、「雇用情勢は日増しに深刻化している」とし、「緊急雇用・経済対策」への重点的かつ迅速な対応の必要性を強調した。様々な取り組みの中から、同対策を始め、「防災」「子育て・教育」について検証し、課題を探る。
●●コメント●●

0 件のコメント: