2009-02-27

民団: 新たな外国人在留管理制度の導入に対する要望書

:::引用:::
 民団中央本部が25日、森英介法相に提出した「新たな外国人在留管理制度の導入に対する要望書」(前文のみ要旨)は次のとおり。

 日本政府においては外国人登録法を廃止し、外国人台帳制度の新設と在留カードの交付等を骨子とした新たな在留管理制度の導入に伴う、関連法の改正案を近々国会に提出すると聞いております。つきましては、このたびの関連法の改正が、両国間の歴史的背景をその原因とし居住するに至った在日韓国人が日本社会で人権を尊重され、より安定した生活を営むことができる改正となりますよう、貴殿の特段のご配慮をお願い申し上げます。

【要望事項】

1、新たな外国人在留管理制度の導入において、特別永住者に対しては 歴史的経緯に配慮し証明書の常時携帯制度から除外することを強く要望します。

 (1)特別永住者は入管特例法の対象であって、入管法上の在留資格に該当するものではありません。このたびの改正において、いわゆる対象外国人ではない特別永住者に対してはこれまでの歴史的経緯に配慮し、対象外国人とは別途に市町村から証明書を交付されるのに伴い、その常時携帯制度からも除外すべきであります。

 (2)特別永住者のほとんどが日本で生まれ、すでに4世、5世まで生まれています。不法滞在者対策などを強化するとして、まだ高校生である16歳の子からICチップ付きカードを受領させ、常時携帯と提示義務を負わせ、それを守らない場合は罰則をもって課すというのは、子ども権利条約を出すまでもなく大きな問題を惹起するものであります。

 (3)第145回通常国会(99年年8月13日)における外国人登録法の一部を改正するに際して、次のように附帯決議がなされております。

 「政府は、次の諸点について格段の努力をなすべきである。①外国人登録証明書の常時携帯・提示義務等に関する規定の運用に当たっては、特別永住者について常時携帯義務違反が刑事罰の対象から除外された趣旨も踏まえ、いやしくも濫用にわたることのないように努めること。②外国人登録証明書の常時携帯義務の必要性、合理性について十分な検証を行い、同制度の抜本的な見直しを検討すること。とりわけ特別永住者に対しては、その歴史的経緯等が十分考慮されなければならない」。以上の決議を最大限尊重すべきであります。

 (4)国連の自由権規約委員会は、現行法の外国人登録証明書について、日本国民には求めていないのに、永住外国人に対しても刑事罰等をもって常時携帯を義務付けることは、自由権規約第26条に反する差別的な制度であって廃止すべきであると勧告しています。この勧告に逆行するような措置を取るべきではありません。

 (5)このたびの新たな外国人在留管理制度の導入に対しては、新たな管理による規制強化と新たな差別が生じる憂慮があるとの声が全国から起こっております。入管特例法において、法務大臣は、特別永住者の本邦における生活の安定に資するとのこの法律の趣旨を尊重するものとする、と規定しており、毎年行われている日韓アジア局長会議においても、韓国側から常時携帯の対象から除外するよう重ねて要望しています。

2、新たな外国人在留管理制度の導入において、就職・就学差別が生じることのないよう特段の配慮を強く要望します。

 (1)法務省(入管)の業務の一環として、外国人が所属する機関(留学先、研修先、職場)に対して、個人単位で状況を定期的かつ随時報告させることを義務づけ、また外国人が届け出た情報と外国人の所属機関から受けた情報を照合するとし、これに従わなかったり誤った情報を提供した場合、刑事罰もしくはそれに相応した措置を取るとしています。これが導入されれば、とくに中小の企業主等は罰則や煩わしさ等を嫌い、外国人及び子弟が採用忌避に会ったり、就職機会を奪われたりして、ひいては就職・就学差別につながるおそれが生じます。

 (2)日本で生まれ育った外国人の子どもたちが、新制度による管理の強化によって差別的待遇を受け、ひいては民族的差別を助長するおそれもあります。今後、日本の発展の一翼を担う外国人及びその子どもたちが日本で住みやすく生きていくために「住民」として人権を尊重され、差別なく共に暮らしていくことができる新制度にすべきであります。

3、新たな外国人在留管理制度の導入において、一般永住者の負担を特別永住者に準じて軽減されるよう強く要望します。

 (1)一般永住者は日本政府みずからが日本への永住を許可した者たちであり、長年にわたり納税等の法的義務も果しています。彼等がわざわざ入管に出向き諸般の手続きや届出をしなくてもよいように、特別永住者に準じた負担軽減措置をとるべきであります。とりわけ在留資格の異なる家族の間を分断すべきではありません。

 (2)永住者の場合、そもそも入管事務所にいく必要がなく再入国のときだけ入管に行けばよいところを、法改定が導入されれば、今まで市町村でよかった変更届や勤務先などをわざわざ遠方の入管に届け出ないといけなくなり、大きな負担増となります。とくに、都市部の入管は今でも非常に混雑しており、さらなる不便と混雑が予想されます。

 日本で生まれ育ち、定住していく外国人の数は年々増加しています。彼らには日本にしか生活の根拠がありません。彼らを外国籍だからといって、昨日今日来た外国人と一緒にして「在留管理」を強化しようとするのは彼らの心を傷つけるものであります。このたびの関連法の改正等におきましては、歴史的経緯を有する私たちの上記要望事項を是非組み入れていただき、なにとぞ特段のご配慮と改善がなされますようお願い申し上げます。

(2009.2.25 民団新聞)
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