2008-12-08

日本と中国―相互誤解の構造 [著]王敏

:::引用:::

■「異文化」としての相互理解のすすめ

   著者は学生時代に「宮沢賢治」の研究を始め、30年以上、日本文化研究を続けてきた在日中国人研究者である。日中はしばしば同文同種の国、中国人は「中 国文化の亜流としての日本文化」と理解しがちである。しかし、こうした理解は重大な誤解を生む危険があり、むしろ日中の文化は異文化としてみた方がいいと 説く。例えば漢字にはない国字の創造。独特の自然現象や神事、行為規範を表現した「凪(なぎ)」「峠」「榊(さかき)」「躾(しつけ)」などである。仮名 文字もまた日本人の繊細な感性の中から創造されたものであった。あるいは「我」の1文字ですむ一人称を日本人は実に100以上の言葉で表現するという。そ の繊細さは主に自然との一体感を重視する感性から来ている。自然を人間と同等視し自然に感謝する慈しみが、仏教思想とも融合し人間社会にまで温(ぬく)も りをもたらしている。この点では人間を自然より一段高いものとしてみる人間本位主義の中国と異なる。こうした日本人の感性を「自然融合感」と表現する。

 物事の是非、論理、説明することを重視する中国人は、日本人よりもはるかに西洋人に類似している。中国は主体や因果関係を明確 にし徹底的糾弾を要求する謝罪重視文化である。他方、日本では主体や責任関係を曖昧(あいまい)にした謝罪が多く、それ以上に様々な場面で謝意が多用され る謝意重視文化で、そこに日中の差異があるという。07年9月、中国・杭州での女子サッカーのワールドカップ終了後、なでしこジャパンの選手が 「ARIGATO 謝謝 CHINA!」という横断幕を掲げて観衆の前を歩いたことに日本を罵倒(ばとう)していた中国人たちは衝撃を受けた。今年5月の 四川大地震で真っ先に緊急援助隊を派遣し献身的な活動をつづけた日本チームに、中国メディアは感謝に溢(あふ)れた言葉で気持ちを伝えた。相互理解が少し ずつ深まっていることを示しているのだろう。

 本書は日本理解のためぜひとも翻訳して中国の読者にも読んでもらいたいが、日本人にとっても中国への理解を深めながら日本自身を再認識するための好著となっている。

    ◇

ワン・ミン 54年生まれ。法政大学教授。著書に『謝謝! 宮沢賢治』など。


●●コメント●●

0 件のコメント: