2008-12-26

中国移動がモバイルテレビ市場に攻勢

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3Gライセンス発行を目前に、チャイナモバイル(中国移動)はモバイルテレビ市場争奪戦への準備を静かに加速している。11月末、チャイナモバイル と上海文広新聞伝媒集団(上海メディアグループ、SMG)傘下の東方龍新媒体公司は、あるキャンペーン計画を発表した。SMGが配信するテレビ番組をチャ イナモバイルの携帯端末で視聴する際の料金を、1MBあたり0.01元に引き下げるというものだ。

 これまでチャイナモバイルが広く実施してきたGPRS方式の従量制インターネット利用料金は、データ量1KBあたり0.03元。月定額制の場合 は、国内の大部分の地域で50MBパックが20元となっていた。「(新しいキャンペーンでは)テレビ番組を1時間視聴しても0.5元かからないことにな る」。東方龍CEOの鄒亮氏は記者にこう語った。

 しかし、今回打ち出した携帯端末向けテレビ番組視聴サービスがブロードキャスト方式の「CMMB」(China Mobile Multimedia Broadcasting)国家基準を採用したものでなく、従来のストリーミングメディアによるオンデマンド方式である点が注目に値する。また、現在のと ころ、この優遇価格はSMGのみが対象で、ビデオオンデマンドにかかわる多くのSP(サービスプロバイダー)とWAPサイトには適用されない。趨亮氏は 「この優遇価格はモバイルテレビのみが対象で、さらにSMGのサーバーに接続する場合に限り、適用される」と語った。

利用料金のボトルネックを打破

 とはいうものの、今回の計画は通信業界の再編を目前にチャイナモバイルが、関連政策を緩和しようとしていることを示すシグナルである、と業界の一部企業は見ている。

 「全国的に見て、利用料金に最も柔軟性がないのが北京と上海地域だが、現在、上海は徐々に緩和されており、来年はかなり期待できる」。独立系 WAP3Gポータルサイトの関係者によると、通信事業者の再編に伴って利用料金見直しの兆候が出始めており、今回のキャンペーンは決して偶然ではなく、利 用料金の大規模な見直しが将来行われる可能性を示すものだという。

 空中網(Kong.net)市場部総経理の張亜紅氏も次のよ うに述べている。帯域幅と利用料金はストリーミングメディアによるモバイルテレビの成長を阻む最大の懸案であった。だが帯域幅については、現在の携帯端末 の動画伝送量が実質毎秒約15フレームへと大幅に減少していることからも技術的に解決が可能となった。さらに3Gの開始で通信量の問題は緩和されるとい う。「しかし、利用料金の問題は依然として存在する」

 現在、地域によって利用料金に大きな開きがある。なかでも北京、上海の利用料金値下げが遅れている。北京移動の「動感地帯」では、月定額5元、 20元、100元、200元のユーザーがそれぞれ、10MB、50MB、800MB、2000MBを利用でき、「神州行」のユーザーは月定額5元、10元 セットでそれぞれ10MB、50MBとなる。現在、携帯で45分テレビドラマを1本観る場合、12MBの通信量が必要だが、それには最低でも5元以上かか ることになる。

 張亜紅氏によると、NBAを一試合観るのに、最も高い時間帯の利用料金は80元にもなるため、ほとんどの映像コンテンツは編集後のダイジェスト版をメインにするしかないのだという。

 また先の3Gポータルサイトの関係者は言う。サイトで行ったアンケート調査によると、調査に参加した6000人あまりのユーザーの6割がモバイル テレビを視聴したいと考えているが、そうでないユーザーの約6割の人は、モバイルテレビを視聴しない最大の理由に「利用料金」を挙げている。

 チャイナテレコム(中国電信)は先ごろ、CDMAネットワークを取得してすぐ7カ月パックで620元、しかもWi-Fiのある場所では無料でイン ターネットができるカードを発売。多くの映像配信のプロバイダーがこれに即座に対応した。「3Gポータルは真っ先にWi-Fiストリーミング放送ソフトウ エアを発売した」と先の関係者は言う。

 こうしたチャイナテレコムの攻勢に対し、チャイナモバイルは、11月21日の「“五節句”統合マーケティング会議」(訳注:「五節句」とはクリス マス、元旦、春節、元宵節、バレンタインデーを指す)で、通信量に応じて独立系WAPと利益をシェアする新モデルを打ち出し、独立系WAPは最大で45% の分配益を得られる見通しとなった。業界関係者によると、このサービスはチャイナテレコムの“デュアルコア政策”(自社のWAPプラットホームと外部の提 携パートナーの地位が対等であること)への対抗策だという。

 (通信関連調査会社の)英Juniper Researchは「モバイルテレビ――ストリーミングメディア及びブロードバンドサービスのチャンス、2008-2013年」という報告書の中で、 2013年には全世界で3億3000万人がテレビを視聴可能な携帯端末を持つようになるものの、このなかで有料のモバイルテレビ視聴を選ぶユーザーは 14%に満たないと予測している。

 実際には、今回のキャンペーン活動終了後、チャイナモバイルは利用料金で、さらに新しい対策を打ち出す計画であり、以前の高額な利用料金に後戻りするのは不可能だろう、と趨亮氏は言う。

キャンペーンの背景にCMMBとの競合

 SMGの関係者は「通信業界再編とCMMBとの競合という大きな背景の下で今回のキャンペーンをとらえると、その意義がよりよく理解できる」と言う。

 ブロードキャスト方式のCMMBモバイルテレビをめぐっては、現在、通信事業各社がすでに国家広電総局と接触し始め、チャイナモバイルとチャイナ テレコムは携帯端末の調達で、CMMB機能を備えたものも選択している。しかし、これまでのところ工業情報化部はCMMBをモバイルテレビの基準としては 採用していない。一方、ストリーミングメディアによるモバイルテレビは帯域幅と高額な利用料金のためCMMBの影に隠れてしまっている。

 オリンピック期間中にCMMBモバイルテレビの人気が高まったことを受け、国家広電総局も普及に力を入れ始めた。11月24日、中広移動衛星広播 有限公司は「CMMB端末の調達プロジェクト入札募集公告」を出した。その調達総数は100万台で、調達対象は各種方式、機能のスマートモバイルに及んで いる。この間、多くの端末メーカーもCMMB機能を備えた携帯を次々と開発した。

 しかし、記者の取材では、現在、通信事業者はCMMBサービスの成り行きを見守っているところで、利用料金の分配、サービス競合などの制約から、全面的に採用するかを決めかねている。

 SMGの関係者は、CMMBはブロードキャスト方式のため、モバイル通信ネットワークに依存するストリーミング方式よりも安定しているが、避けが たい弱点があると指摘。テレビの発展過程を、アンテナでブロードキャスト方式の信号を受信するアナログ機から、同軸ケーブルを使って信号を伝送するケーブ ルテレビへ、そしてインタラクティブ性を備えたデジタルテレビになったと分析したうえ、「しかし、モバイルテレビの発展は、こうしたサイクルを経ることは なく、一足飛びにインタラクティブ式デジタルメディアに直接発展していくだろう」としている。

 また先の3Gポータルサイトの関係者によると、CMMBはブロードキャスト方式のネットワークのため、オンデマンドを実現するのは困難で、CMMBのネットワークを別に構築しなければならない。ネットワークのサポートがない場所では視聴できないという。

 また、現在のところCMMBは無料で視聴できるが、国家広電総局は、CMMBを視聴者に課金して収益を上げるものと位置づけている。だがストリー ミングメディアの「無料の一般会員、有料のVIP会員+映像広告収入」という収益モデルの方が将来的に好ましいと考えられている。

 趨亮氏は次のように言った。現在、モバイルテレビサービスは収益を生み出していない。しかし、東方龍はすでに数十万のユーザーを有している。ス ケールメリットを求めるにはユーザー数を百万単位まで上げなければならない。そうすることで、初めて広告など手法で収益を得ることが可能となる。

(郭建龍=21世紀経済報道、北京発)


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